昨日も投稿した米大統領選だが、おそらく数日はこのテーマで投稿するのだろうナア、と予想していた。多分、日本のマスメディアも同じだったろう。
ところが、蓋を開けるとトランプ氏の圧勝となった。
おかしいネエ・・・
今朝になってから専門家は「信じられないですね」と言うのかと思いきや、今度はどこでもトランプ氏圧勝の原因分析を語り始めている。
ちょっと滑稽だが、マ、与えられた事実が発生した原因を分析する姿勢は、「こんな結果は間違っています」と言い募る専門家よりは、よほど好ましいと言える。
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ただ、このところアメリカ国内の有権者の傾向について報道される内容を聴いてきて、「こんな状況って本当にいまあるのか?」と、そういう違和感がなかったわけではない。
それは、
今回の大統領選では、男性がトランプ支持、女性はハリス支持と、男女間で明確な違いがある。
女性は投票率が高いので、この点からもハリス優位である。
こんな見方が事前には語られていたと記憶している。
しかしネエ・・・
うちのカミさんは(当然)女性であるから、何かの社会問題で「女性はこう考えるのヨ」と、男性である小生からみるとかなり「超越的視点」から異論を投げかけることは、たまにある。しかし、電気料金引き下げとか、原発再稼働とか、消費税率変更とか、いろいろとありうる政策をめぐって、
あなたは男性だからそう考えるかもしれないけど、女性は違うわよ!
こんな風に政治的問題で男女のギャップというのを痛感した経験はほとんどないのだ。
実際、人工妊娠中絶をどう考えるかという問題で議論が盛り上がっていたようだが、確かに女性の身体は女性のものであるかもしれない。しかし、胎児を中絶するのは、権利なき憐れな命を殺す行為ではないか、そんな見方も確かにありうるわけであって、どちらの立場をとるかで男女が正反対になっていて、政治的立場を性別で明瞭にクラスター化できるのだろうか?
こんな疑問もあって、男性ならト氏、女性ならハ氏。ちょっと眉唾だネエ、と。そう感じてきたわけだ。
結果はトランプ氏の圧勝である。
世間では「ガラスの天井を今回も打ち破れなかった」と評している向きもある。が、小生思うのだが、
いやいや、ガラスの天井に手が届かなかっただけじゃあないですか?
打ち破る云々じゃあないと思いますけど・・・
こんな風に観ています。
というより、前に投稿したように、「ガラスの天井」というのは、アメリカの政界には(日本の政界にも?)、実在はしていないと思う。
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それにしても、もし男女間で支持率ギャップがあったなら、予想通りの大接戦を演じていたはずである。
結果が予想と異なっていれば、予想の前提になっていた仮説が誤っていたからである。
有力な解釈が一つある。
それは、世論調査の対象になった女性が嘘をついていた、これは十分あり得る。
トランプ候補と、ハリス候補と、あなたはどちらを支持しますか?
そうね、やっぱりハリス候補を支持しています。
やはりそうですか。ご回答、有難うございます。
マア、例えばこんな風な回答をしていた女性が多数いたのではないか。何故なら、女性であるにも関わらず「私は、ハリスさんではなく、トランプの方を支持していますよ」とは、回答しにくいではないか。というより、調査されること自体が不愉快である可能性が高い。
何かの記事にあったのだが、
世論調査にウソを回答したことがありますか?
こんな世論調査をしたところ、4人に1人が「ウソを回答する」と回答したそうである(^o^)。
===後日追加部分===
気になって調べて見ると、こんな記事があった:
…… 米国の新興ニュースサイト「アクシオス」がハリス世論調査会社(副大統領とは無関係)に委託して調査した結果を10月30日の記事で伝えたが、有権者の約4分の1、最若年層の約半数が「誰に投票するか」を問われれば「ウソをつく」と回答したからだ。
Source: Yahoo! JAPAN ニュース
Date: 11/5(火) 11:54配信
Original: FNNプライムオンライン
URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/8e78cb32f15f6644f7750dcdaf9138f7c551a11a
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政治的立場に《男女差》というのは、データが伝えていたほどには、なかった。とすれば、男性が「トランプを支持するサ」と嘘をつく動機はないと思われるので、男女を含めてトランプが圧勝したのも理屈が通っている。これが真相だろう。
即ち、今回の米大統領選で、大接戦になるとの事前予想を覆して、ト氏圧勝になった理由としては、世論調査にウソを答えた人が多数いた。そういうことでしょう・・・データにバイアスがかかっていたらワールドシリーズにも勝てません。
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というより、世論調査は最も安易なデータ収集手法だと小生は思っている。
経済学の一分野に「産業組織論」があって、Jean Tiroleといえばその分野への学術的貢献が評価されノーベル経済学賞を授与された大家である。2014年のことである。
Tiroleが著した"The Theory of Industrial Organization"(=「産業組織論」)は、1988年の刊行だが、今でもこの分野の標準的テキストであり続けていると思う。小生も、ずっと以前にひもといたことがあるが、
データに基づく計量経済分析よりは、企業経営者に対するインタビューを含めた《ケーススタディ》の方が、産業組織分析にはより有益である。
Tiroleがとっているこんな基本的スタンスを知って、当初は驚いたものだ、というより計量経済学を専攻してきた小生としては、やや不愉快に感じたものである。しかしながら、ずっと後になって新たに設置されたビジネススクールに移籍してから、Tiroleの立場が理解できるようになったのだ、な。確かに社会経済、企業経営について集めている数量データは、人間ドックで集めている数字のようなものだ。その人の健康状態は数字で表現可能であるというのは極端すぎるだろう。何が測定されているかに無知ならばミスリードされる可能性すらある。
選挙結果を事前に予想するなら、機械的な支持率調査などに依存するのではなく、もっと丁寧に時間をかけて有権者の心情を聴きとることにマンパワーを投入するべきだと思うのは、上のTiroleの指摘とも重なっている所がある。
要するに、メディアの情報収集力は本質的な意味合いで低下している ― 考察力も、思うに「並み」のレベルだ。数値データは効率的かつ科学的で(一見?)カッコいいが、しばしば人を騙すものである。何によらず、知的活動の結果の価値は、《労働価値説》がシンプルに当てはまっていると、小生は今でも思っている。《科学的手法》が《手抜き》の免罪符になっているとすれば必ず失敗する。
【加筆修正:2024-11-09】
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