2012年1月13日金曜日

欧州官僚の観点 ― 一つの典型

英国が財政統合に絶対反対の姿勢を打ち出している背景として、傲慢尊大な欧州官僚への反発がある点、色々なメディアによって紹介されている。

これに対してEUで仕事をしてきた高級官僚はどう考えているのか?墺紙Der Standardで一つの典型というか、ドイツ選出の欧州議会議員で、前外交委員会委員長であるエルマー・ブロック氏に対するインタビューが掲載されていた。その中のまとめの部分から:
Standard: Sie haben seit dem Maastricht-Vertrag 1991 alle EU-Reformen an führender Stelle mitgemacht und verhandelt, was ist der Unterschied zu heute? 
Brok: Heute geht es nicht um den großen Wurf, sondern um eine Reparaturmaßnahme, nachdem die Glaubwürdigkeit auf den Märkten zerstört worden ist, weil man sich im vergangenen Jahrzehnt nicht an die Regeln des Stabilitäts- und Wachstumspaktes gehalten hat, einschließlich Deutschland und Frankreich. Es läuft immer etwas schief, wenn man die Nationalstaaten alleinlässt, wenn sie allein entscheiden. Die Nationalstaaten sind ja die potenziellen Sünder, deshalb können sie nicht gleichzeitig die Schiedsrichter sein. Deshalb ist es wichtig, dass Institutionen wie die Kommission oder der Europäische Gerichtshof eine entscheidende Rolle haben. (DER STANDARD-Printausgabe, 2.1.2011)
いま、<欧州統合>というグランドデザインが問題になっているのではなく、市場経済に対する信頼が崩壊した後、 どのような修正を施していけばいいのかという、これが今の論点であります。これが一つ。

次に、国民国家(Nationalstaaten)が独自に意志決定を行えば、常に物事は間違った方向へ行く。国民国家という存在こそが、潜在的な犯罪者であり被告であるのですから、その国民国家が物事の是非を決めていくことはおかしいのです。故に、国民国家よりも上位にある機関、欧州委員会や欧州裁判所がそれに該当するのですが、そういった上位機関がその役割を果たすことが重要なのです。

どうであろう。小生は、欧州個別国家を統べる<帝国>を希求しているような印象を受けるのだな。これもオーストリア国民、ドイツ国民の伝統的情念なのであろうか ― 理屈ではなく、心持ちに近い心情だろう。

そもそも国家とは一部の人間集団が団結することで誕生した。それは構成員にとっては利益だが、排除されたり敵視されたりする人間集団にとっては不利益であったろう。個別の国家という存在が、人類にとってゼロサムゲーム的状況をもたらすのではなく、人類全体にプラスの価値をもたらすのだという根拠はどこにあるのだろう?国だって、単なる<地域エゴ>じゃないの?こう言ってしまうと、上のブロック氏の発言に近くなるか・・・?それは必ずしも本意ではないのだが、な。ただ、個人の自由の彼方に、必ずプラスの価値がもたらされるチャンスがある。常にそうとは限らないのは認めなくてはなるまい。

とはいえ、ブロック氏の発想、この考え方には英国人はついていけないのではないだろうか。

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