2012年1月1日日曜日

価値を生み出す構造改革こそ真の緊急課題だ

年末には民主党の「税と社会保障の一体改革」が何とかまとまり、今のところマスメディアの社説を読んでも、概ね平均的には「まあまあの内容ではないか」と、そんな受け取り方をされている。本当は、公務員改革、議員定数削減などなどと課題山積、何が最も大事なことかと言われれば、「そりゃ、税と社会保障というよりこちらでしょ!」。ちゃちゃを入れたくなる御仁は数知れずいるに違いない。実際、そうだろうと思う。とはいえ、「善は急げ」ともいう。多少の異論はあっても、方向が正しいのであれば、まとまった順番で実行するべきだと小生は思う。国全体が黒字であるにもかかわらず、これほどの財政赤字をどうにもできない国民であれば、日本人が解決できる課題は何一つないだろう。震災復興ですらも、色々と批判が出るたびに頓挫し、ついには国全体の活力が決定的に失われるか、中央政府の権威が完全に失われ日本国という国家が解体過程に入っていくことすらも視界に入ってくる。それが現段階じゃないか、と。そう思うのですな。

とはいえ、税と社会保障の一体改革は、所詮は日本国内でカネをどう再配分するかという<やりくり>に過ぎない。日本人全体としての収入合計を増やす政策ではない。収入合計を増やすには、就業機会を増やさないといけない。就業してとりくむ仕事の質をあげないといけない。安くしないと売れない商品を作っている間は駄目であり、高くても買ってもらえる商品を作れるようにならないといけない。それも世界市場で。<やりくり>ではなくて、<いい仕事>をする、できる。そのための構想、戦略。いま最も緊急性のある課題はこちらじゃないかと思うのだ。<やりくり>なんて、つまりは再配分。再配分はゼロサムゲーム。誰かがもらえば、誰かがとられるわけだから、所得が湧いて出てくる話しでは、そもそもないわけである。所得は価値を生み出す、生産する、いい仕事をすることでしか、全体、増えないのだ。

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今朝の北海道新聞の朝刊。一面トップは『ロシア極東に道銀農場』。道内企業と来春共同で農業ビジネスを後押しする計画が報じられている。
北海道銀行の主導で、道内の農業生産法人と農機具メーカーが共同で、ロシア極東のハバロフスク市郊外に寒冷地型モデル農場を来春に開設する方針が明らかになった。現地の農業法人から千ヘクタールの農地を借り受け、作付けする計画。今年5月にも関係者が現地を訪れ、具体的に協議する。モデル農場では道内の農業技術を結集し、牛乳や飼料用トウモロコシなどを生産。将来的には、ロシア極東で大掛かりな農業ビジネスを展開する構想を描いている。(北海道新聞朝刊、2012年1月1日1面より引用)
予定区域であるアムール川流域は肥沃な黒土地帯が広がっているものの、現地の農家は単一品種の集中連作を繰り返し、地力の衰えを招いているとのこと。加えてソ連崩壊とともに集団農場が解体され、現在では耕地面積の三分の一しか活用されていないそうである。こうした現状をみた韓国資本、中国資本は既に共同事業を持ちかけ「ランドラッシュ」現象が起こっているという。そこに北海道も参入するわけ。北海道農業の「輪作体系や、試料を発酵させて保存するサイレージなどは、世界的にも高い水準」にあるので、事業が発展すれば東アジア全域の食料庫として再生することができる。もちろん、それだけではなく北海道農業にとっては、コスト劣位からコスト優位へ移る契機となり、道内農場では差別化に成功した高くても売れる農産物を生産し、外地ではコスト優位性の下で価格競争に勝ち抜ける農産物を生産する。このような競争戦略が可能にもなるのである。

これは、言うまでもなく<TPP対応戦略>である。TPPは確かに道内農業にとっては、ある種の黒船かもしれない。しかし、日本が世界にも稀な和魂洋才ハイブリッド型近代化モデルとなったのは、黒船直後であったという事実を忘れてはならない。

今日は元旦。一年の計、百年の計をじっくりと考えたい時だ。<税と社会保障の一体改革>、かたや<ロシア極東で農業ビジネス>。どことなく臆病さと虚無感が漂い情けなさのあまり落涙を禁じえないのはどちらであるか。それは自明ではあるまいか。

日本経済新聞朝刊の一面は・・・と。何々「開かれる知、つながる力」。動きだすチーム・グローバル。何のこっちゃ?シリコンバレー、ボストン、中南米ハイチ、ケニアのナイロビ・・・の話し。
プロもアマも日本も外国もない。復興の最前線で「チーム・グローバル」が20年後の街の姿に目をこらす。(日本経済新聞、2012年1月1日朝刊1面より引用)
言いたいことは分かる。現実はこうだということは分かる。しかし、これが全国の読者に向かって一番先に伝えるべき情報であるのだろうかなあ?被災地にとって何よりも励みになる報道なのかなあ?本社高層ビルの窓際で、パイプ(?)を燻らせながら思いを世界に馳せるエリート新聞人の横顔シルエットと、そうした人士が楽しみとする<アームチェア・エディター>という仕事の特性が、小生、何となく分かったような気がしたのだな。

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