2012年1月19日木曜日

いまの株価上昇は単なる「逃げ水」か?

昨日もとりあげたがた、欧州は意外なほどに先行き楽観的だ。アメリカについても、本日のロイターで以下のとおり: 
(Reuters) - Stocks jumped to their highest since July on Wednesday as the International Monetary Fund sought to help countries hit by the European debt crisis, while forecast-beating earnings from Goldman Sachs dispelled some worries over bank profits. 
The stronger-than-expected earnings from Goldman Sachs Group Inc (GS.N) followed disappointing results from Citigroup (C.N) on Tuesday and JPMorgan Chase & Co (JPM.N) last week. 
Goldman shares shot up 6.8 percent to $104.31, while the S&P financial sector .GSPF rose 1.7 percent, leading the S&P 500 higher. 
The banking sector has outperformed the broader market so far this year, but the financials sector was the S&P 500's weakest-performing one last year.
While the Goldman results supported financial shares, the IMF's willingness to bolster its crisis-fighting resources gave the sector a big push. Financials had suffered throughout 2011 on worries that Europe's debt crisis would hit banks globally.
"Any time liquidity is added to the financial system, it gives financials a little bit of breathing room, and it will result in higher prices for the banks," said Kevin Caron, market strategist at Stifel, Nicolaus & Co, in Florham Park, New Jersey. 
The IMF is seeking to boost its war chest by $600 billion to help countries reeling from the crisis, even though some nations insist Europe must first do more to support ailing members, according to sources. (continue..)
(Source: NEW YORK | Wed Jan 18, 2012 5:11pm EST )
やはりIMFが出てきましたか!ECBの量的緩和政策実施状況もすごいらしい。欧州金融機関は、既にECB当座預金を潤沢に積み上げているので、銀行間決済に困ることはないだろうということだ。ズバリ、自転車はこけない、ということ。本日の日経も欧州短期金利が<意外なほど>落ちついていると報じているが、その背後にはECB、さらには欧州の屋台骨を支えようと決意しているはずのIMFがついているためだ。

独紙FTD(Financial Times Deutschland)のコラム記事(Chefökonom)には"Deutschland wird am Ende zahlen"(ドイツが結局は払うのさ)があったりする ― もちろんFTのドイツ版だから、「独紙」とはいえないかも。

どちらにしても、これは<想定内>ですな。

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しかし金融機関の資本が毀損している状況を解決しない限り、問題は解決しない。欧州金融機関の不良債権と資本の潜在的既存は、文字通り、福島第一原発で焼け落ちた核燃料と類似した問題だ。今後何年もの間、埋み火となり市場の正常な取引の障害になるだろう。金融機関に公的資金を投入するか、買収するか、清算するか、解は三通りしかない。公的資金の源によって、買収元の国籍によって、更に細かく解決法はわかれる。分かれるが故に、決定までにはなお時間がかかる。金融機関は救済されるかもしれないが、それ以外の投資家が失った富は戻らない。耐えられなくなった国家から順に、計画的にEUから脱落するか、不時の破産に陥るか、これも二通りのシナリオしかない。

これを日本のマスメディアは<長い曲がりくねった道>と形容している。欧州のとんでもない政治システムを観測していると、これから欧州がたどっていく道筋は、日本が歩んだ道よりも、更に曲がりくねり、さらに長くなる公算が高い。浮かれていてはダメだろう。

とはいえ、いまの株価上昇は、昨夏のECBによる金利引き上げというネガティブ・ショックからの立ち直り過程であるともいえよう。また2009年春の底打ちから財政主導で回復してきたのが、2011年春から夏にかけてピークを打ち、その後、半年程度のミニリセッションを経たのだと受け止めれば、これまでの景気循環の経験則とも合致するように思う。

× × ×

政策当局が頻繁におかす細かな判断ミス、実体経済の波動、金融的なショック、一次産品のショック等々、波乱の世紀で先を中々見通せないが、春まではこのまま行きそうである。

もちろん隠れた病巣が顕在化すれば、そこで終わり。その病巣、つまり余裕のある内に治療するべき箇所は、欧州の金融機関、財政システムのほかに、アメリカの伝統的製造業、日本の規制下にある伝統的サービス部門(それから政治?)、中国の伝統的国営企業など、実に山積している。どれも既得権益と周辺組織が癌のように強固に形成されている低生産性部門である。政治家の真の敵は、いつでも既得権益と周辺組織である。これは時代と国を問わず変わらない。大手マスメディアの報道内容すら、これら癌化した部門については、重力の歪みの影響を受けるように、情報は真っすぐに伝わらず、論理にはバイアスが加わる。

一人一人のジャーナリストの自由と国民の眼力がその国の窮極の資源だと思う。日本は国民の眼力は備わっているが、一人ひとりの活動の自由を保証する社会の懐がせまいのではないかと感じている。個人情報保護のプラスとマイナスについて個別に論ずる以前に、情報発信活動の規制、寡占、権威は私たちにとって一番の損であることを忘れてはならないと思う。

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