2011年7月13日水曜日

短期経済予測 ― 今後1年間の景気動向指数の急上昇

昨日の国会で菅総理が原発事業の国有化に言及したよし。マスメディアでは、またまた思いつき発言、迷走発言ではないかという報道ぶりだ。しかし、マスコミも余りに幼稚というか、読みが浅いのではないだろうか?

そもそも原発国有化など、福島第一原発事故の当初段階からして、かなりの程度で予想されていた方向である。小生も本ブログでそんなことを書いている。今になって、発言をするのは世間の風向きを見ていたからに決まっているではないか。小生などは、ついそう思ってしまうのだ。

発言が思いつきのように見えるのは、記者会見が少なく、断片的にその時々言及することが散発的に伝えられるからだ。つまり、マスメディアこそが、思いつき宰相・菅直人のイメージを作ってしまっている面がある。

しかし、一連の発言が向かうところを延長して見通すと、見事に一直線を描いていることに、誰もが気づくはずだ。首相は「経済産業省が敵である」と言い、「あそこはとんでもない組織なんだよ」と口にしているそうだが、菅内閣が実際に実行しようとしていることは、経済産業省の省益に完璧にかなう。

原発事業を電力会社から切り離し、国の責任で発電事業をするとして、必ずしも公社形態をとる必要はない。電源開発(J-Power)が事業を継承してもよい。しかし、公社にしておけば利益の大部分は国庫納付金として吸い上げることができる。自然エネルギー活用という大義名分で引き上げられる電力料金によって、原発公社の利益もまた、会計上膨らむはずだ。また、原発事故の損害賠償保険金を電力事業を行う全ての民間事業者に支払わせることにすれば、巨額の保険金支払い準備基金が積み立てられることになる。それもまた、国家資金となる。公社を運営する経営陣は官出身が6割、民間出身が4割というところだろう。更に、送電管理統一化という名目で送電事業においても国家の関与が強化されれば、送電経路を流れるインターネット情報を集中管理することまで可能となる。ここからも金をとることができるだろう。

いま進行していることの終着駅は、エネルギー政策の再検討、自然エネルギーの利用拡大、原発の安全性強化を名分とした官業拡大ではあるまいか?国家もまた、政府もまた、利益を出す必要が出てきたと考えれば良いのである。これこそシュンペーターが強調した「租税国家の危機」を乗り越える一つの解決策ではないか。

思えば、江戸幕府の財政危機を乗り越える努力が吉宗、家重と続けられた後、田沼意次が企画したことは、幕府自身が営利事業への参入を図ることだった。それは幕府エスタブリッシュメントの価値尺度と矛盾し、その倫理的障壁を乗り越えることが困難であったがゆえに失敗に終わったわけだが、税収による国家運営の危機は何らかの斬新な方法で解決されねばならない。


そんな想定をすれば、菅首相の一連の発言からは、極めて理路一貫した戦略性が認められるとすら、小生には感じられるが、そうではなく全くの阿呆が総理の座についているだけなのであろうか?小生は、黒子役を果たしているアドバイザーがいるのに違いないと思うのであるが、マスメディアは一切そんなことを考えもしないらしい。これまた不思議だよなあ・・・そう思ってしまうのですね。不思議といえば、与党の岡田幹事長が、首相にズルズルと引きずられている状態も、本当に奇妙なことである。バラバラ状態で勝手に批判しあっている与党議員達も奇妙なことである。

何もかも奇妙で不思議なのだが、事実として進行中であるのは、決して混沌と迷走ではなく、極めて計画的かつ戦略的な官主導の世論操作ではないのでしょうか?

それはさておき。

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内閣府から5月の景気動向指数(速報)が公表された。これをみると、生産状況を示す一致指数は急速に回復しつつある。5月までの数字を基に、6月以降、今後1年間の動きを予測してみた。方法は予測の定番であるARIMA(アリマ)モデルによる。下がそのグラフである。


景気動向指数は10種類以上の経済データを総合したもので、その数字自体が単一産業の生産高を表すわけではない。それに数字は全国ベースのもので、被災地での情報収集がどの程度満足に行われているのか、情報収集が不完全であるとして、その状態と大震災以前の数字がなぜ接続できるのか、色々と疑問に思う点はある。それでも、政府の責任で公表されている統計データである。まずは、そのまま受け取って、6月から来年5月までの指数の動きを予測したわけだ。

上の図に見るとおり、生産は今後上がります。顕著に上がり、間もなくリーマン危機直前のピークを抜くでしょう。そもそも3.11直前までの経済はその勢いでしたからね。結局、事前に言われていたことであり、小生はそんなにうまく行くわけがないと悲観的でもあった生産体制の復旧が、速やかに完了されたということ。この点は素晴らしいことだと思う。

もちろん何が起こるか分からない。グラフの中で色つきで示されている予想区間内で見ておいてほしい。

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