2011年7月14日木曜日

グローバル・グリーンは21世紀の国際政治を動かすか?

やはり管首相の<脱原発>記者会見は惨憺たる報道ぶりだ。「具体策に言及なし」、「脱原発、難題ばかり」、う〜ん、やはり大都市圏大手新聞社は原発推進派なのかなあ。「管首相の脱原発依存発言は無責任だ」、「首相前のめり、延命狙う」。どうやら、日本経済新聞は反管に舵を切り、現政権との正面衝突を覚悟したか。経団連を中心とする財界本流と概ね同じ立場だねえ。ま、それも善きかな。マスメディアなる会社は、そもそもこうでないといけない。

北海道新聞はというと、「脱原発社会を目指す、具体策なく」、「泊3号機、営業運転明言せず」。その下に「帯広に太陽光発電実験場」、「ソフトバンク、年内着工表明、発電所は苫小牧有力」。次のページには「自然エネ普及へ一歩、メガソーラー建設へはずみ」。「孫構想実現に壁も」、「農地の規制緩和、再生エネ法案成立が不可欠」。日本経済新聞社とは(予想されるとはいえ)相当異なった立場に立っていることが歴然としている。

これまた当然のことであって、本来は、同一国とはいえ住んでいる地域、従事している仕事、業界、社内の地位等々によって全く違った意見、政治観を人は持つはずだ。というか、政治的立場は個人個人で違うのが当たり前だし、路線対立は社会の中に常にある、そのため社会は常に政権交代を含んだ緊張状態にある。決して均衡というか、和の状態などにはない。こうでないと民主主義社会はメリットを発揮できないのである。とんがった部分、異端分子を排除する統一化志向は社会の進化を抑制する根本原因である。小生はそう思っているわけであります。

ま、その意味でエネルギー路線闘争。どんどん、やってくれなはれ。本音はこれに尽きる。

長く顧みると、19世紀から20世紀にかけての社会内対立は、何といっても<階級闘争>だった。資本家と労働者の利害対立は埋めがたいものであり、遂には体制変革への駆動力ともなって、現実に国際共産党運動の広がりを止めることはできず、ロシア革命を引き起こした。国際的政治運動が帝国政府を倒せるなどと、どこの誰が考えたでありましょう。東ヨーロッパの共産化、中国共産党の権力奪取。第2次大戦後の社会においても、社会主義志向、階級闘争の捉え方、共産党運動は世界の人たちに訴求力をなお持ち続けた。日本でも無視できない政治勢力であり続け、今なお55年体制の残滓を見ることができる。

その共産党運動というか、階級闘争を軸とするマルクス・レーニン主義が次第に輝きを失って、奔流するマネーに漂流するバブルのようなグローバル資本主義がやって来た。市場原理主義。しかし・・・方丈記ではないが「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」。こんな寄る辺のない社会にまた生まれてきたい、そう願う人は一人もいない(一人もいないと言っては嘘になるか)。人間、マネーのために生きるのか?そんな風にも感じさせる。そんな社会は、嫌でしょう。反動的感情と言えばその通りだが、グローバル金融資本主義は嫌だ。こう思う人が増えているのも事実なのだ。経済の現実と人々の価値観との矛盾。一言で言うと「均衡」のとれた社会ではないのですね。こんな海図なき航海のような状況が既に10数年続いている。

社会も社会組織という組織である以上は、誰もが「それはいいことだよね」と同意する価値尺度と毎日の行動原理とが、合致していなければならない。でないと、社会は不安定になる。マネーは人間個々人にとって最高善にはならないのですね。少なくとも、ここ日本では。そういうことではないでしょうか?

小生は、リーマン危機と今回の原発事故”Fukushima Crisis”が、21世紀の世界政治経済に対して、非常に長期間、無視できないモメンタムを与え続けるのではないかと予想している。リーマン危機に対しては、国際間で議論を展開する仕掛けが既にある。では国際エネルギー戦略についてはどうか?国際エネルギー機関(IEA)とか、国際原子力機関(IAEA)とか、既設の機関はあるが、フランスが旗を振り始めているように、原子力利用とその安全性確保だけをとっても、国際機関が果たしている役割と与えられている権限は非常に不十分である。国際的な制度設計のレベルアップは、原子力分野では緊急性の高い課題だ。

しかし、科学的議論とは別にエネルギー戦略の選択において、国際的に組織化された強力な政治勢力が出てくることは、小生、やはり歴史の必然ではないか、と。その中心機関としては、たとえばグローバル・グリーンがあり、日本でも緑の党・日本が既にある。ドイツ緑の党グリューネ・パルタイが、ドイツ政治に一定の政治的影響力を与え始めていることは、先日の脱原発閣議決定からも窺える。エネルギー戦略と整合した産業計画しか実現できない。このロジックには中々勝てないのですね。それもグローバルに網をかけるのが最も良い。これは、これ自体、国際的政治運動となる運命にある。

既存のこの緑の党運動が、今の形のまま規模を拡大させて、そのまま世界政治に影響力を行使するようになるだろうかと問われれば、「今の形のままでは、違うのじゃないでしょうか」と、そう感じるのだ。しかし、今回のフクシマ危機がグローバル・グリーン勢力の拡大にプラスのショック(補足:システム論で言う撹乱要因のことです)を与えたことはほぼ確実である。

今は、民主党というか、菅と反管などという茶碗の中の争いだが、そんなちっちゃな痴話喧嘩でケリのつく話題ではない。緑の党が日本で旗揚げをする絶好の機会は、ほぼ確実にやってくるだろう。民主党も自民党も新たなライバルが登場したときに、どう戦うか、検討しておかないといけない。誰が、現首相の権力を継承するにしても、脱原発・自然エネルギー拡大支持勢力とどう向き合うか?これは確実に将来の日本の政治的アジェンダになるだろう。この選択は、TPPに参加するとか、EUと自由貿易協定(FTA)を締結しようとか、そんな個別の政策よりも一段高い判断であって、だからこそ欧州では国民投票にまでもつれこむ国も出てきたわけだ。

今の日本の世情を見ると、菅と反管の勝負でグダグダのまま決着させるよりも、「一次エネルギー戦略に関する国民投票」を実施するのが、最善ではないのか?そう思われたりもするのです。

0 件のコメント: