2011年7月27日水曜日

それでもアメリカ債を買いますか

欧州の債務危機は、土壇場でドイツがカネを出すことを承諾し、ひと先ず、混乱を回避した。もちろん問題解決には至っていない。ギリシアでは、その後も財政緊縮に抗議する暴動が起こっているし、イタリアも、スペインも債務不履行の懸念が消えたわけではない。

そもそも7月24日時点でこんな見方がある。
CDSの保証料(スプレッド)から、各国の国債のデフォルトの可能性を試算したものがあります(今年の5月現在)。今後5年間にデフォルトする確率は、ギリシアは70%です。ポルトガル、アイルランドイタリアスペインは20%から50%程度です。日本の国債のデフォルト率は8%、イギリス5%、アメリカ4%、といった具合です。(出所:川口有一郎「ギリシア国債破綻を理解する」 )
数字は5月時点の評価である。その後、ギリシアは借金の相当部分を棒引きされたが、それってやはり「債務不履行」であろう。予定通りの収入が債権者は得られなかったのだから。イタリア、スペインの状況が基本的に変わったわけではない。

というより、ギリシア単独でも2回の救済策合わせて20兆円にもなる公的資金を投入した。イタリアではいくらいるのか?スペインではいくらいるのか?こんな心配が高じてくると、いくらドイツがいても欧州単独では 自力再建は無理であろう。投資家が、そう見きった瞬間に、イタリア、スペインも国債デフォールトの瀬戸際に追い込まれるだろう。問題の本質は未解決だ。

多分こうなるだろうことは、エコノミストは予測していた、という記事が週刊エコノミスト7月5日号にある。
2008年12月に米ハーバード大学のロゴフ教授とメリーランド大学のラインハート教授は、共同で「金融危機の余波」という論文を発表した。その論点は、近年のバブル崩壊の歴史を演繹的にパターン化すると、バブル崩壊は金融危機と財政危機を合わせた3点セットで起こる、というものだった。
順序としては、まず大規模なバブル崩壊が起こる。次に、資産価格の下落が逆資産効果を生んで景気の下押し要因となり、さらに担保価値の下落が金融の機能低下をもたらして金融危機へ至る。金融危機から脱却するには、大規模な財政政策による景気対策が必要となるが、その原資は国債など借金だ。そして最後に、この借金を返済できなくなって財政危機に至る。(同誌28ページ)
ギリシアだけではなく、欧州、アメリカ、日本で進行中の財政危機は根は同じ、ということだ。債務不履行。つまりは富裕層が泣きを見るわけなのだが、問題への対応プロセスでは、大衆課税が強化されることもあるし(インフレ放置はその一種だ)、富裕層の資産切捨てを押し通す場合もある。それは、その時の政権、権力基盤のあり方によって異なる。

さて、アメリカ。財政赤字を解決しなければならないという問題意識は、そもそも与党も野党も共通して持っている。ただ方法論が違う。与党民主党は富裕層への増税を軸としたい。野党共和党は社会福祉の歳出削減を軸としたい。それで理念論争を繰り広げている。もう一つ、赤字削減のスピードも論点である。2012会計年度(11年10月~12年9月)大統領予算教書 に沿えば、財政赤字が1年で5400億ドル削減されることになる。円になおせば43兆円ですよ!経済成長率を5%程度押し下げるだろうという試算があるそうだ。

いやあ、日本では話が常にみみっちくて、公共事業予算の削減で実質経済成長率は0.3%程度押し下げられそうであるとか、そんな程度の話なら聞きなれているが、財政緊縮で成長率5%ダウン。仕方ないよね、国のためだ。これで予算教書だそうってんだから。にもかかわらず、中央銀行FRBは量的金融緩和を継続しなかった。第3次緩和(QE3)を予想する向きが多いのはそのためだ。

本当にアメリカ国債は償還停止となるのだろうか?金利支払い停止もありうるのだろうか?それはないと見ているようだ。ただリーマン危機も、不良資産救済プログラム(TARP)7千億ドルを含む「金融安定化法案」が下院で否決されるという事態を目の当たりにみて、初めて世界の市場は一斉に大暴落し、その後の混乱へつながっていった。

今のところ英誌The Economistで実施されているアンケート調査でも、アメリカ債よりはイタリア債の方がデフォールトになるだろうと見る人の方が多い。
アメリカ債がデフォールトになったとして、だからどこの国債なら買いますか?当面の締め切りである8月2日に向けて、そんなに心配する声が上がっていないというか、どことなく自信(?)というか余裕(?)というか、感じるのは、こんな事情もあるからだろう。何といってもアメリカだからなあ、今月は利払いが遅れたけど、他にないしね。ま、持ってるか。そんな心理もあるのかもしれない。

日本政府と中国政府には「何としても利子は振り込む」と財務省から連絡があったそうである。

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