「最近のインフレ動向」というからには日本経済の話ではない。
月曜日の日経朝刊には「景気指標」という欄があることは以前にも引き合いに出した。全面に国内外の主要経済指標の変動が作表されていて、中央にあるのが「景気指標」という短い文章だ。<今週のポイント>のようなものだ。今朝は「中国、統計が映さない物価高」。
中国の消費者物価指数は、前年比で8月が6.5%と直近のピークを形成し、以後9月、10月と6.2%、6.1%とインフレに落ち着きが見られ始めている。物価指数の水準は掲載されている表にはないが、これだけの鈍化が前年比に出ているなら、物価の高さそのものは夏以降、横ばいになっている気配だ。ところが、消費者物価指数には反映されていない値上がりが中国国内では観察されているよし。たとえば、幼稚園の月謝。正規の月謝以外の協賛金を要求されることが多いという。協賛金はあったり、なかったりするので、継続調査が原則の物価統計では採用品目にならないと思われる。更に、安い粗悪品が市中に出回っているらしい。食品や生活用品でまがい物が増えていると書かれている。同じ価格で品質が向上すれば、それはデフレだが、品質が悪化して価格が変わらなければインフレを意味する。また北京の食材市場では卵が1キロ10元程度だが、スーパーの末端価格はその6,7倍することもあるという。卵の産地、等級、包装状態の違いもあるから断言はできないが、これまた物価統計の調査対象に何が含まれているかで、データは全く違ったものになる一つの要因だ。
そもそも物価統計は生活実感に合わないという指摘が日本においても昔からある。それは当然だ。たとえばタクシーが値上げされてもタクシーを使わない人にとっては関係のないことだ。ビールやワインの価格が急騰しても、お酒を飲まない人にとっては痛くも痒くもない。また米が値下がりしても、米の嫌いな人には何も嬉しくはないだろう。一人ひとりが感じる<物価>は、買っている商品の中身次第であり、それぞれ異なったものなのだ。政府が公表している物価は、全国民の平均的なライフスタイルに応じた物価だから、大半の人にとっては実感と合わない理屈だ。
それでも中国のインフレは6%水準の高さにある。それに対して、韓国は概ね4%水準、直近の10月は3.9%に鈍化している。台湾は大体1%台半ばである。シンガポールは5%台。他方、アメリカは3%台のインフレだったが、次第に4%に接近している。台湾の鎮静ぶりが気になるが、大体、4ないし6%のインフレがアジア新興国の最近の状況だ。インフレ率格差だけをみると、元高、ドル安局面には自然にはならないが、中国にとっては元高容認は自国のインフレ緩和に役立つはずだ。中国のインフレは2008年に5.9%のあと、09年にマイナス0.7%、10年に3.3%の上昇だった。リーマン危機による落ち込みを財政拡大とリフレ政策で乗り切ったことが明らかである。
中国政府は4%程度までインフレ率を落としたいのではないか?現在はまだ前年比6%である。中国の金融財政政策が拡大へと切り直されるのは、あと4ヶ月ないし半年は必要ではないか?しかし中国のGDPは今年に入って、四半期ごとに前年比9.7%増、9.5%増、9.1%増と急低下している。台湾は6%成長から3%台に落ちた。アジアはすべての国で拡大が鈍化している。生産活動の実態は、拡大への方針転換を求めている。
アジア新興国は、目標を自国通貨高へ置き、インフレを緩和し、併せてアメリカ、ヨーロッパ経済を下支えする政策を当面はとるべきだ。それは同時に、日本にとっても非常にプラスになるだろう。先進国と新興国との政策調整が今は大変重要である。単にギリシア危機を解決するためのカネ集めだけの話しにしてはならない。
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