確かに円高防止=円安誘導であるのだから、米欧に理解を求めるという日本政府の姿勢は理解できる。しかし、「すいません、これはちょっと耐えられないと、そう思ったものですから・・・」、そんなニュアンスになってしまうのは大いに問題だ。為すべき介入、為すべき誘導は、マーケットが円滑に働き続けるためには不可欠の公的サービスだ。マーケットが余りにリスキーになると、ある意味で道路や公園などのパブリックスペースの利用が自粛される状態になる。不必要な乱高下を正常化し、荒れたゲームを正常状態に戻すレフェリーと同じ役割を、政府・中央銀行は果たさなければならない。
面白いのは日経が紹介している英国紙ファイナンシャル・タイムズの日銀報道である。タイトルが「円売り介入、抜本策にならず」だから、目を引く。
日銀は他の主要国の中央銀行より、はるかに高範囲の政策手段を長年、実験してきた。だが、実施規模はかなり控えめで、デフレに終止符を打つには至らなかった。
日銀がより大胆な量的緩和策を打ち出し、買い入れ対策を短期資産ではなく、10年もの国債にすれば、円の上昇圧力を抑えこむ有効な手立てとなるだろう。さらに重要なのは、長く低迷する国内経済を刺激する効果も大きいことだ。これこそ、日本が本気で取り組むべき真の課題だ。(11月2日付け日経朝刊6面、出所:FT11月1日付け)日本政府と日銀は、もっと本気で量的緩和に踏み込んで、円高を抑えこんでいくことが何より大事なことである、と。円高防止の重要性を、イギリスの新聞すらも、指摘している。これは何という不思議!
これほどまで海外は日本銀行の及び腰の政策実施姿勢にやきもきしているのか、と。ま、ある意味エレガントであるのだろうが、外国の政府や中央銀行のやりっぷりは、もっとはるかにブルータルであり野蛮である。「何でそんな恩着せがましいことを言うかねえ?」、裏を読みたい御仁もいるだろうが、ここはFTの指摘が本筋だ。
日本政府は、米欧に対して「為替介入」の理解を求めるという姑息な姿勢ではなく、戦略的目的をもった金融政策を実行していると言うべき状況だ。この姿勢が、日本政府と日銀をみる海外の目を変えて、それが引いては日本の長期的国益に寄与すると見る。
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