本日、7~9月期GDP統計速報が公表された。今年の夏場は震災後の生産回復、節電騒動による生産下押し、更にはギリシアの財政破綻、米国債の格下げなどによる金融市場の混乱が重なり合い、これらのプラス、マイナス両面の影響がどう出てくるかが注目されていた。
対記者クラブ説明では季節変動を取り除いた季調済み系列の前期比を主に説明する。それは<足元の景気の足取り>を伝えるためだ。公表資料によれば、この季調済み前期比は1.5%、年率では6%成長という拡大スピードを達成した。いうまでもなくこれは大震災後の生産落ち込みの反動である。下は季調済前期比を図に描いたものだ。
東日本大震災は生産サイドを襲ったショックである。生産組織は寸断されたが、需要が急低下しない限り、国内のどこかに生産が移動する。世界規模のマネー収縮による需要蒸発がリーマン危機では起こった。やはり図をみると、いかに大惨事であったとはいえ、経済的災害評価の規模という点でリーマン危機と東日本大震災を横並びでは論じきれないことがわかる。いずれにしても、夏場の増加は明瞭である。
しかし、同じ数字を原系列の前年比でみると全く異なる。
ようやく前年同期の水準に並んだレベルでしかなく、今年に入って水面から頭を出したことは一度もない。リーマン危機で10%減に沈んだ後、6%増という高さに回復したあと、またマイナスに沈んでいるということはリーマン危機直前の生産にまだ復帰できていないことでもある。
これはリーマン危機の後、鮮明になってきた国内民間企業の<過少投資体質>の帰結でもある。日本の経済問題は、まずは財政赤字であると言われてきたが、いまの日本の財政赤字は煎じつめれば日本国内の資金偏在でしかなかった。国内民間企業が生産のための投資をしなくなったということの意味合いは財政赤字を上回る本質的問題である。政府は、なぜそうなっているかを真剣に考える必要がある。
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