2011年11月22日火曜日

次は国家経済戦略を討論する番だ

今朝あたり消費税率引き上げ案が、ようやくにして政府から出て来たようだ。政府部内でそれなりに煮詰まって来たのだろう。14年度からまず8%へ引き上げ。15年4月か10月に10%まで上げる案が(いまのところ)有力だそうだ。

実際には、消費税率10%でも財政再建は無理だろう。消費税率15%まで引き上げを長期目標としては掲げておかないと、出尽くし感を形成し、日本の将来に希望を持つ心理を再構築するには不十分で、結果として<不透明感>が残ることになるだろう。今の原案のままでは、日本政府は依然としてその場しのぎの<瀬戸際戦略>をとり続けるという印象をぬぐえない。これは間違いないが、それでも目先3〜5年間くらいは世界に向かって、日本も変わり始めたというプラスのインパクトを与えられるだろう。

さて、Nikkei BP Netを時々見るのだが、大前研一氏が洪水で被害をうけたタイ復興のため2兆円規模の支援をするべきだと提案している。いうまでもなく日タイ関係は歴史的にも深く親密である。日本の経済援助(→円借款に限る)の中で対タイ援助と対インドネシア援助は二本柱であった。現在でもタイの輸入相手国としては日本が最大であり、タイの輸出相手国としては他のASEAN諸国が20%を占め、次いで中国、日本の順である。日本の製造業は2000年代に入って以降、東南アジアとの工程間分業ネットワークを形成してきたとよく指摘されるが、タイはそのネットワークの拠点に位置づけられる。

そればかりではなく、中華帝国再建という明確な国家戦略をもつ中国に対して、日本がどう向き合って彼の国のエネルギーを日本の利益につなげていくかを考察することこそが、日本の利益につながる。その国家経済戦略を議論する中で、タイ、ベトナム、インドネシア、台湾、韓国、モンゴルなど、周辺アジア諸国というプレーヤー群は極めて重要だ。歴史的なわだかまりと足元の損得勘定から、中国の対日批判が今後将来において逆転するとは考えにくい。日本は、このような外側からの攻勢に対しては、外側においてパワーバランスをとる戦略を選ぶべきだ。自国の戦力を隣国との対立に投入して、経済取引の機会を失うのは愚かだ。タイ、ベトナム、朝鮮半島、モンゴルなどの諸国が、近い将来、中国と結託し日本に対して攻撃的態度をとることにより、自国の利益を求める誘因を持つ可能性は、歴史的にも、民族的にも、論理的にも、小さい。理がそこにあるなら、日本のプラスになるような関係に強化できるよう、国家戦略を実行していくべきだ。

こうした議論をするからにはロシアを含めない訳にはいかない。TPP騒動では「アングロサクソン陣営をとるのか、中華帝国をとるのか?」という巷の噂が飛び交ったが、いずれ「中国と結ぶのか、ロシアとつきあうのか?」という選択も日本は迫られるだろう。同じ日本ではあるが、北はロシアとの交流で大きなプラスを得られるし、南は中国との経済取引が利益を約束するだろう。しかし、東アジアにおいて、中国とロシアが利益を分け合う関係を形成するのはほとんど不可能だろう。だから、日本はここでもまた選択を強いられるだろう。

いまのTPP騒動など呑気な騒動だった。そんな感想が出てくると予想する。中国とアメリカはシェアのとりあいではゼロサムゲームを繰り広げようが、GDPの数字で見れば協調が可能であるし、協調の利益は大きい。この利得表は中国とアメリカには当てはまるが、中国とロシアには当てはまらないだろう。そんな国際事情が顕在化する日が遠からずやってくるのではあるまいか?

消費税率引き上げは、一家の収入をどのように配分するかという話しだ。収入管理の次は、一家がどのように活動していくかという話しにならないといけない。内輪の話しの次は必ず<遠交近攻>の話しになる。野田政権と民主党は財政再建でやるべきことをやったと思ってはいけない。財政再建は、やっておかないと前に進めない単なる助走、それも第一歩でしかない。

政治家がやっておかないといけない宿題に、やっとのことで取り組み始めた。そのくらいに考えておくのがよいと思われる。

0 件のコメント: