2011年11月9日水曜日

「飛ばし」は罪悪か?

オリンパスの損失隠しが大問題になっている。同社は1990年代以降、財テクに失敗して千数百億円の含み損を抱えた。その損失を隠蔽するため損失を抱えた資産を高値で複数のファンドに売却。同社は損失を決算に計上しなかった。ただ当初から時価を上回る価格で当該資産を購入したファンドを助ける必要がある。そこでオ社は直接に比較的高値で当該資産を買い戻してもよいし、その資産を購入した第3社に何かの報酬を高値で支払ってもよい。その第3社が、どうやら野村系金融マンが経営する投資顧問企業であるらしく、そこに支払うサービス料が高すぎると異議を唱えたオリンパスの英国人前社長が解任されたことは記憶に新しい。

カネの流れは、あっちに行ったり、こっちに行ったりで、込み入っているが、要するにババをパスしたり、戻したりしながら、含み損を決算対象から外すという狙いは一貫している。現実には発生している<含み損>を広く公衆に公表しないのは、責任を免れるために他ならない。それ故に、こうした隠蔽行為は金融商品取引法に違反し、おそらく地検特捜部事案になっていくであろう。違法配当で会社法違反に問われる可能性もあるよし。逮捕される者も複数でて来るに違いない。

ただ含み損を飛ばしたとはいえ、せいぜい千数百億円である。それが許されざる犯罪であるのなら、たとえば私たちが延々と支払って来た公的年金保険料だが、それは今どのような形になって管理されているのであろうか?

厚生労働省の公表資料にもあるように年金積立金残高は22年度末で概ね120兆円である。その収益動向だが22年度は3千億円の損失が発生している。収益率でみればマイナス0.26%だが、損失額はとても僅かな金額であるとは言えまい。もちろん公表しているのだから「飛ばし」ではない。しかしながら、我々はたとえ政府が愚かな資産運用をしており、預けたお金の一部がなくなっていると知っても、年金契約を解消し保険料支払いを止めることが自らの意志ではできない。ちなみに金融市場が大混乱した20年度には9兆3千億円の損失が発生している。一切運用せず、現金で預かっておけば良かったのである。

リーマン危機で仕方がなかったという言い方もできるだろうが、小生が卒業した大学のトップは金融投資の失敗の責任をとって、次の選挙には立候補できなかった。年金積立金運用の責任をとって辞任した政治家や官僚を小生は寡聞にして全く聞いたことがない。多分、一人も責任をとっていないのであろう。

このような状況が一方にある中で、民間企業の不正経理を裁く。それも当然必要な行政行為ではあるが、では政府が現に為しつつあることは不正ではないのか?法に従っているという点では「不正」でないのかもしれない。しかし、権力を行使して所得の一部を徴収し、それを投資でスッても責任をとる人間がいない。不正ではないかもしれないが、無責任であり、政府と国民の間に構築するべき<信義>を壊している。

オリンパス社の行為は、同社と一般投資家との間の信義をないがしろにするものである。信義をないがしろにしているという点では、オリンパス社も政府も同じ穴のムジナである。

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