とはいえ結論の部分だけは許容範囲だろうと思われる。
So if Spain were to follow the example of Greece, and ignore what happened in Japan, the most likely result would be a severe and prolonged recession. To me, that is a much larger threat to the eurozone than any of the various crisis offshoots that excite us momentarily. In the big scheme of things, it really does not matter whether Greek bondholders agree on a voluntary participation. If Spain were to fall down a black hole, no rescue fund, however large, would be able to drag it out.
The irony is that a fiscal treaty that set out to reduce the eurozone’s debt could be the cause of a debt explosion, because it greatly increases the risks of a semi-permanent slump in large parts of southern Europe. If that were to happen, nothing could save the eurozone. (Source: Financial Times, January 29, 2012 9:01 pm, by Wolfgang Münchau)筆者のMünchau氏は今回の財政協定は”狂気の沙汰(quite mad)”と形容している。善かれと思って実行することが良い結果を生むとは限らない。財政緊縮はその典型である。スペインが、IMF推奨の緊縮策をより一層ドラスティックにして財政赤字縮小を目指す。これは破滅的な負のループにヨーロッパ全体を陥れることになるだろう。景気後退期には税収の自然減など自動安定装置(Built-in Stabilizer) を活用するべきであって、意図的に財政均衡を目指すべきではない。この指摘は、マクロ経済学のテキスト通りで大変オーソドックスだ。昨夏のECBによる唐突な金利引き上げもそうだが、確かに大陸欧州の政策当局は経済学を知らない。そう言われても仕方がありません。
だから今回の財政協定は<不必要>であるとファイナンシャル・タイムズは論じている。キャメロン首相との対立も不必要な対立である、と。英国は、いまのEUについていけない。そんな議論だ。
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同じことは、野田現政権が進めようとしている消費税率引き上げについても当てはまりそうだ。が、こちらは話しは別。IMF、OECDとも日本については、いつ金融市場が混乱して、国債が販売不能になるかもしれないので、可及的速やかに増税をするのがよいと推奨している。たとえば
- Wall Street Journal, "OECD Urges Japan to Rase Sales Tax", April 21 2011
- Wall Street Journal, "UPDATE: IMF Signals Support For Japan Sales Tax Hike", June 8 2011
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強調されている背景は、言うまでもなく東日本大震災からの復興事業に要する財源調達。新しく発生した財政需要に対して、国債の新規発行では、市場で消化しきれないという判断がある。
小生、いつも最も不思議に思うのは、民主党のマニフェストだ。大震災前に作成した長期方針が、大震災後にも通用するかのように議論している。その民主党とマスメディアの思考構造である。たとえば関東大震災前に政府が公表していた政策方針が、大震災の後にも変更なく有効であったか。そんなはずがないであろう。
起こった大災害は起こったものとして戦略を変更しなくてはならない。変更するのは、無論、その時点で政権にある与党である。いくら政権に戻りたいと思っても「現在のマニフェストでは今回の大震災は想定されていない。故に、現在のマニフェストは破産している。与党は有権者との約束を果たせない。早々に解散をして民意を問うべきである」、こんな風に叫ぶ野党党首がいたとすれば、単なる<バカ>である。想定外の変動が起きるたびに選挙をしないといけない。野党は想定外の大災害を待ち望むようになるだろう。そんなモチベーションを与える制度が良い制度であるはずがない。
民主党は、大震災後の日本が歩むべき道筋を示すために<改訂マニフェスト>を速やかにまとめるべきである。それに基づいて、消費税率引き上げと社会保障の再構築に関して議論するのが正攻法のはずである。