2019年12月8日日曜日

世論調査と社会状況の関係

ロイターにこんな記事がある:
[ロンドン 3日 ロイター] - 問い:英国議会の解散総選挙の結果をどうやって予測するか。ただし、非常に多くの世論調査が間違っており、有権者の半数は投票先を決めておらず、誰が勝つかではなく、どれくらいの差で勝つかが重要な要因であるとする。(中略)
ロンドンを本拠とするユーライゾンSLJでマクロ系ヘッジファンド・マネジャーを務めるスティーブン・ジェン氏は、「参考にするデータの85%はかつて世論調査の結果だったが、今では恐らく30%だ」と語る。「世界があまりに複雑になってしまい、かつては標準的な指標だった世論調査は、もはや実像を捉えていない」。
(出所)ロイター、2019年12月8日08:13配信

世論調査では、単に「与党に投票しますか?」という質問でも意味のある一問となる。その場合、社会全体の与党投票率が$p$であるとき、$N$人のサンプルから得られる投票率のサンプリング誤差は$\sqrt{p (1-p)/N}$であることは数学的に証明されることである。サンプルの無作為性はサンプリング方法に配慮さえすれば実現できる。したがって、サンプリング誤差は標本数さえ増やせば幾らでも小さくすることが出来る。

この論理には誰も抗うことは出来ない。故に、『かつては標準的な指標だった世論調査は、もはや実像を捉えていない』という言い方はロジックとして間違っている。

しかし、現時点の英国内情勢を想像すると12日に予定されている総選挙結果を世論調査から予測するのは極めて困難だろうなあ、とは思う。この点には共感できる。

その理由は「民意が一日の内に急変するかもしれない」。それ以外にはない。その人がどちらの党に投票するかについていくら事前に調査しても、当日の行動が予測できないからだ。あらゆる統計調査は、集団全体の特性が安定的に決まっていることが大前提である。6の目が出る確率が$1/6$である正しいサイコロが常に振られるのであれば、何回かの結果を観察していれば必ず6の目が出る確率を推測できるようになる。しかし、6の目が出る確率が$1/6$ではないイカサマのサイコロがランダムにとられて振られるならば、次に出る目の予測は完全に不可能になる。いくらデータを集めても役に立たないからである。

世論調査が役に立たないという理由は以上のように理解できる。

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理解はできるが新たに感じる疑問がある。

こんなに不安定な民意が重要な政策課題を決めるというのは問題解決の方法としては最悪の方法である。今日の結果と明日の結果は多分違うだろうから、今日の結果を尊重する気持ちには誰もならないだろうからだ。

なぜ最良の方法を探そうとしないのだろう。

『民主主義が正しい』というドグマから解放された方がよい。『民主主義が正しい答えを選ぶことは比較的多い』という程度の利用がおそらく方法選択としては最適なのだろうと小生は思う。

以上、最近何度か投稿している内容と整合した書き込みになっている。

【加筆:12月13日】昨日の英国総選挙ではどうやらジョンソン首相率いる保守党が圧勝した模様である。世論調査では保守党優位ではあったが労働党の猛追が指摘されていた。それが「圧勝」。やはり世論調査の通りの結果とは相当違っていたと言えるかも。しかし……、選挙を昨日やったからこんな結果になったのであって、明日やったらまた違った結果になるのかもしれない。『我々の民主主義は世界一素晴らしい』などと喜んでいるほど素晴らしい民主主義とは小生には思えない。

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