2020年1月9日木曜日

一言メモ: 目の前のやりとりが理解できない間抜けな応答の一例

マスメディア関係者は人のやりとりの中身を理解するプロのはずである。ところが・・・

日本時間で昨晩、レバノンに国外逃亡した日産元会長・カルロス=ゴーン氏がマスメディア各社に会見をするというので某TV局のレポーターがわざわざ海外出張費をかけて現地まで出張っていったところ、招待をしていないというので入室を拒絶され、逆に海外記者から取材されたというのだ、な。

それに対して

ゴーン被告は無罪と潔白と主張するんであれば、なぜ海外に逃げたのか。なぜ日本で堂々と裁判を受けて無罪を勝ち取らないのか


こんな見解を述べておいたということだ。このような意見を持っている人は日本人にも案外多いのかもしれない。

しかし、小生は偏屈さでは人後に落ちないので、『ホント、間抜けな応答だねえ』と感じた次第。

だってネエ、そうでんしょう。ゴーンさんは日本の司法はアンフェアだって、そう言ってるんでしょ?これは冤罪だって、最初っから推定有罪で見られてるって、アッシはそう聞きましたが、違うんですかい?堂々と裁判を受けちまって、そのまま有罪にされちまって、 刑務所に入るってサ、そりゃああっしだって怖いねえ。たまたまゴーンさん、大金持ちだからさ、カネ使って逃げたんでしょ。日本人だってカネがあったら逃げたいって思う人はいるんじゃないんですかい?だからさ、潔白だって主張しても日本の法廷では無駄だってネ、一体なんでそう思ったかって。そのワケをさ、ゴーンさんの口から聞きたいんだって、だからベイルートまで来たんだって、このくらいは言いなよってね……。エッ、そんなことをゴーンに聴くなんて無駄だ、ゴーンは悪い被告人だ、あいつの言う事なんて信用できないって? はあ~、な~るほどネエ…そこなんじゃあござんせんか?逃げるしかないって決めたのは。

ま、世界には他人を何百人も殺害して「英雄」になった司令官もいる。その司令官を殺害しろと軍に命令して国益を守ろうとしている大統領もいる。英断か、愚策かは、結果をみて判断するしかない。カルロス=ゴーンの一件は人の生き死にとは関係のない、まあ「微罪」 ― 利益を争う企業という山賊の内紛 ― のようにも思うのだが、それはそれとしてどうカタをつけるかを考える段階に来たということだろう。

逃げられた事実を認めたうえで、出来ることをやっていくしかない。未来志向である。これを「元の原状に戻すべし」などと言って原理・原則論に執着すると、日本‐レバノン、日本‐フランス関係が段々とおかしくなるだろう。これまたバカバカしい事である ― そもそも今回の「日産お家騒動」の全体が間抜けなドタバタ喜劇であったのが、正真正銘の事実であるかもしれない。

法はソーシャル・マネジメントのツールである。日本の現行法が世界に向けて「正しい」ことを主張しても不毛である。目的は国の利益、法はそのためのツールである。利益を守り増やすことなら出来ることが多々あるはずだ。

駐レバノン日本大使がレバノンのアウン大統領に面会して「事実究明への協力」を確約してもらったと報道されていたが、併せてゴーン氏の口から政府関係者の実名が出ないよう依頼することも忘れてはいなかったのではないか。ODAの継続についても話したかもしれない。もしそうなら、これもまた、今から出来ることの一つではある。

それにしても…、

奇襲のようなゴーン逮捕劇。まるで真珠湾奇襲のようで手際の良さには吃驚したが、華やかだった割には日本の利益という点では「持ち出し」に近かったのではないか、少なくともいまの現状。「作戦失敗」と言わざるを得ないのではないだろうか。泥沼的広報合戦に引き込まれそうだ。肝心の日産はイメージ悪化で業績は伸びず、株価下落が甚だしい。社内は混乱している。全治何年の難題を抱え込んだのだろう。下手な手術で術後の傷口が化膿したようなものだ。

戦術的には見事だったが、戦略としては下策であった。誰かが詰め腹を切るタイミングはそう遠くはないと小生はみている。

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