2020年12月5日土曜日

ホンノ感想: 辛坊治郎「ウェークアップ!ぷらす」に吃驚したこと

 土曜の朝は辛坊治郎氏の『ウェークアップ!ぷらす』を観るのが習慣だ。辛坊氏、思い込みが強すぎることが余りにも多いが、その感性は波長が合うのでずっと見続けている。

本日も例によって「新型コロナとGOTO」であった。国交大臣がリモートで出演していたが、国交大臣に向かって「いまコロナ感染者が急増していますが、それについてどう思いますか?」と。これを聞くなら感染状況と感染対策を所管している厚労大臣の方だろうと思ったりしたが、まあ、無関係の閣僚でもないので、これもありだろう。

思わずのけぞったのは、最後に高齢のコメンテーターが『それにしても、国会って役に立っているんでしょうか?』とつぶやいたことだ。

いやはや、これほど露骨な《野党批判》をTV画面で堂々とやるとはネエ……。

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人によっては、「国会全体を批判したんでしょ?」と言うかもしれないが、それは現実とは合っていない。大前提として、現在の政府は差し当たって役に立っていると認めざるを得ないからだ。

携帯料金の引き下げに目途をつけたことが一つ。それから、何かと批判の多い「GOTOトラベル」だが、これは危機にある観光関連業界(ホテル・旅館、航空、鉄道、観光バス等々)を救済するための緊急経済対策である。その目的は概ね達成されつつあったのだから政策は成功している。デジタル庁も然り。無駄な押印手続きの廃止も然りだ。アメリカの反応を心配すれば当分は無理だろうと思われていた「RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership):東アジア地域包括的経済連携」も(何と!)首相就任早々の時点で署名に踏み切った。安倍前首相には出来なかったことだ。首相就任以来僅か2か月で得た戦果としては上々であるという判断に反対する人は、実績によらず自民党政権に絶対的に反対する極左勢力のみであろう。

ただ一つ、新型コロナの感染対策には失敗した。経済政策を推進する大前提である《感染抑え込み》が出来ていないからだ ― それでも欧米に比べればゼロの数が一つ、二つ少ないのだが、現実に医療が危機的状況に陥っている以上、感染抑え込みには失敗したと言わざるを得ない。

ほかに、些末な問題として「学術会議6名任命拒否」もある。が、これは本質的には共産党支持勢力と政権がどう対峙するかという問題であって、学問の自由などとは無縁の話しだ。

総じてみれば、小生は

現在の政府は十分役に立つことをしてくれている

そう観る立場にいる。

政府が役に立つことをしてくれていると前提できるなら、政府を支える与党もまた役に立つ存在である。であれば、『国会は役に立っていないですよね』とつぶやくのであれば、

野党は役に立たない存在ですよね

という意味になるのは当然の理屈だ。それをTVで堂々と言うのだから恐れ入る。

そういう主旨ではないと言うなら、「政府のしていることは役に立っていない」と判断しているというロジックであり、現状に基づけば「私は共産党にシンパシーを感じている」という主旨になる。

自己責任で自由に放送局を開設して報道できるなら、自社の政治的立場を主張しても何の問題もないが、日本では放送免許の許認可権を政府が有している。つまり規制産業であって、保護されており、保護している国民には色々な人がいる以上、公共性をもたなければならない。一党に偏してはいけない。これが基本原則である。それをネエ・・・と吃驚したわけだ。

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もっと吃驚した、という以上に唖然、愕然、慄然の「三つのゼン」を今朝もまた覚えたのは、同じく出演していた医師のコメントだ。

GOTOトラベルがマイナスに働いたエビデンスはないわけですけど、プラスに働いたエビデンスもないわけですネ・・・

これには驚きのあまり、手に持っていた珈琲カップを落としそうになった。なぜ辛坊氏は

先生、ただですネ、GOTOトラベルは感染対策ではなくて、観光ビジネス救済を目的にやったものなんです。感染防止にプラスになるとは最初から思っていなかったと思いますが・・・

なぜ、MCとして一言注意しなかったのかネエと。この辺に同氏の限界があるのだろうか。まったくネエ、「GOTOでヒトが動けば、感染にはマイナスに決まっとるだろう!」、「そのマイナスの証拠がないって言っとるんだ!」と、そうTVに向かって声を上げたものだから、カミさんも驚いて小生の顔をマジマジと見ることになった。

この間に実行した感染対策は

マスク着用、手洗い、3密回避

これだけである。

いやいや、厚労省の伝統的作戦(?)と言っても良いのだろうか、《クラスター追跡作戦》もあった。「発症者」、もとい現在では「陽性者」であるが、を確認して、その「濃厚接触者」を追跡して検査する作戦だ。いわば「後手の先」を行く作戦思想だ。襲来するウイルスを受けて立つ戦略だ。確かに立派な作戦思想であるが、新型コロナは無症状者の感染力が非常に高い。一人の陽性者が確認されれば、その背後に100人(くらい?中国では)の無症状感染者がいる可能性がある。ここは「後手の先」というか「専守防衛」ではなくて、「敵基地攻撃能力」をもたないと負けるのじゃないか?「先手必勝」が勝利への道ではないか?先手必勝で感染者を発見・隔離・保護する作戦思想に変更して、それに必要な検査能力、人的資源を動員する方向へと向かうべきではないか?そうでなければ勝てないのではないか?経済対策も実行困難になりジリ貧ではないか?小生は、別に感染症の専門家ではないが、「勝負の力学」は分野を問わずウイルスが相手でも共通しているところがあるような気がしている。

何トカ分科会の尾見会長が「いみじくも」語っているように、実際に感染者が急増している状況の中、「もはや個人の努力を超えている」わけである。つまり、政府は個人々々にも努力をしてもらいながら作戦を実行してきたが失敗したということである。何かが足りなかったので失敗したという理屈になる。そして、足りなかった点は個人々々の側にはない。そういう意味である。実に立派な人物である。かつ論理が透徹している。小生もその通りだと思う。

この

感染抑え込みのために政府がしてきたことは失敗に終わった

という点をマスメディアは掘り下げなければならないわけである。いやしくも「情報番組」と名乗る放送をするならば、「何故?何故?」という問いかけを畳みかけていかなければならない。政府や医療関係者は最前線で戦っている。同じように、TV局側も努力をしなければなるまい。個人々々は既に十分に努力をしているのだから。


ま、たとえ「情報番組」としては極めて劣悪であるとしても、面白ければそれで視聴率は上がるのであって、番組制作目的は概ね達成しているのである。たとえ誤ったメッセージを番組が伝えるという副作用があるにしても、視聴者が多いということはスポンサーの要望には応えられている。来週以降もやっぱり「ウェークアップ!ぷらす」を視ようと思っている。役に立っているという点では「GOTOトラベル」と同じなのだ。

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