2020年12月10日木曜日

一行メモ: 「ベッドは多い、医療スタッフは少ないがまあこんなもの」という見方の落とし穴

 先日の投稿でも、日本は他の先進国に比べて病床数は世界に冠たるものがあるが、医療スタッフの人数が少ないという点に触れた。

2017年時点の数字だが、病床数は人口千人当たり13.1であり、これは米国、英国のそれぞれ2.8、2.5はおろか、ドイツの8.0をも遥かに上回ってダントツの1位である。これに反して、人口千人当たりの医師数は2.4人であり、ドイツの4.3人に比べると半分強といったところだ。英国は2.8人で日本と同レベルだが、病床数がずっと少ないので、医師1人がケアするべき病床数は日本よりずっと少ない。負荷率が低いわけだ。

問題の核心は

日本では1人の医療スタッフがケアするべきベッド数が他の先進国に比べてはるかに多い。つまり、個々のスタッフの高度な技量ゆえの「少数精鋭主義」。これが日本の医療業界の大きな特徴だ。加えて、国民皆保険制度の下で一律のきめ細かなサービスを尽くすことが義務にもなっている。

先日の投稿でも述べたが、「少数精鋭主義」は長期の消耗戦には耐えられない。これ正に組織戦略論の基本である。医師に求めるレベルを緩和し量を確保するべきだ。ワクチン開発が遅れていれば、日本は国家的危機に陥ったに違いない。

一言でいえば《油断》である。堺屋太一の名作『油断』があったが、日本はまた油断をしたのである。なぜだか分からないが、日本人の弱点は「油断」をすることが多いという国民性にある。多分、「海」と「言葉の壁」に守られてクローズドな社会であったからだろう。

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