2021年10月23日土曜日

ホンノ一言: 国民性に合わせて政治はされるものなのか?

 COVID-19に関連して久しぶりの投稿。

いうまでもなく、コロナ・ウィルスは万国共通で、どの国という国の違いはウイルスにとっては何もわかっちゃいないし、どうでもよいことだ。それでも国によって感染動向に違いが出るのは、それぞれの国の国民や政府が違ったことをするからだ。(ファクターXなどという言葉もあるが)因果関係は基本的にはこうだろう。


イギリスで感染者数が再び増加の傾向にあり、こんな記事が出るに至っている。

キングス・カレッジ・ロンドンのティム・スペクター教授(遺伝疫学)は制限解除について、「ワクチン接種と自然免疫によって、早々に勝利できると期待して行われた」と語る。「それだけではうまくいかないということが分かった」

 英政府は20日、ワクチンを主な対策とする戦略を強化する一方、一部の医師や科学者が必要性を指摘しているマスク着用の義務化やワクチン接種証明などの措置に関しては、導入する必要は今のところないと述べた。

(中略)

 ボリス・ジョンソン首相は英国の「免疫の壁」がウイルスを制御すると見込んでいた。ある程度までは、その通りになった。英国では夏の間、感染者が目立って急増することはなかった。ただ、感染レベルが大きく下がることもなく、8月から9月にかけては1日あたり2万5000~4万人で一進一退が続いた。

 ここに来て、感染は再び増加している。21日の新規感染者数は7月以来初めて5万人を超え、先週の感染者数は前週比18%増となった。

Source: Wall Street Journal(日本語版)、 2021 年 10 月 23 日 03:42 JST

イギリスはワクチン接種率の上昇を根拠に早々に行動規制を撤廃するというギャンブル(?)に打って出たものの、デルタ株に関してはたとえ接種率が90%を超えても集団免疫にまでは至らないと専門家は警告を発していた。とはいえ、ワクチンを接種すれば、重症化、死亡等のリスクは格段に小さくなるということも明らかになってきた。

どうやらイギリスは、1日5万人の感染者が出て来てはいるが、行動規制撤廃の方針は変更しない構えである。確かに、ワクチン接種数の増加、未接種者数の減少、治療薬の登場が続く中、むしろ感染するなら感染して、

最大多数の人々が最大数のコロナ抗体を保有する

ワクチンであれ、実際に感染するのであれ、こんな社会状況に至るのであれば、感染拡大も正に「天のなせる計らい」であって、社会が均衡するまでの道のりにすぎない。こんな視点も明らかにある。

さすがに「功利主義」発祥の地・イギリスである。悪く言えば、結果良ければ全て良し、という政策思想に近い。が、もしワクチンを義務化しないのであれば、イギリス流のアプローチが正しいスタンスと言ってもよいと小生は考えているわけで、英政府の思考には論理が通っている。

他方、アメリカのリベラル派経済学者として著名なポール・クルーグマンはThe New York Timesのコラムで以下のように書いている。抜粋して下に引用しておこう:

But the biggest thing that could bring fast relief would be undoing the skew in demand by making people feel safe buying more services and fewer goods. The way to do that is by getting the pandemic under control, above all by getting more people vaccinated.

And how can we get more people vaccinated? Mandates. No need to spend time here rebutting claims that requiring workers or customers to be vaccinated is an assault on liberty: Sorry, but freedom doesn’t mean having the right to expose other people to a potentially deadly disease. At this point we can also dismiss claims that requiring vaccination will disrupt the economy: While many people told pollsters that they would quit rather than take their shots, in practice employers that have required vaccination have experienced only a handful of resignations.

In other words, what our economy needs now is a shot in the arm — or rather, millions of shots in millions of arms. And vaccine mandates will provide those shots, in addition to saving lives.

URL: https://www.nytimes.com/2021/10/19/opinion/vaccine-mandates-us-ports-supply-chain.html

Source: Tne New York Times, Oct. 19, 2021

コラム記事のテーマはワクチン接種それ自体ではなく、米国内でサプライチェーンの渋滞が発生しているということである。その主因としては、調理器具、健康保健器具などの耐久消費財購入が激増していることが挙げられる。つまり需要急増に物流機能が対応できずにいるのだ。

実際、以下の図が記事の中で示されている。米国・セントルイス連銀が運営するFREDが作成している。


耐久消費財が急増しているのは、サービス消費がひかえられているからである。サービス消費を控えているのは、コロナ感染のリスクをアメリカの消費者が心配しているためである。故に、いま必要なことは《モノを買うのではなく、安心してサービスを楽しめる》、そんな社会を実現することである。

クルーグマンは、社会に《安心》を広げるための特効薬は《ワクチン接種義務化》であると断言している。同じことは先日の投稿でも書いているが、この位の理屈は誰もが(ホンネでは)分かっているはずだ。

義務化は自由を侵害すると人は言うが、全員がワクチンを接種すれば、感染がなくなるわけではないが、ほぼ確実にカゼ程度の病気となり、過渡に感染を心配する社会からは脱却できる。誰もが安心して外食を楽しめるし、ジムにも通える。それを妨害する自由は誰ももっていないのだ、というのがクルーグマンの主張である。

実際、アメリカでは官公庁、民間企業でワクチン接種義務化が進んでいる。しかし、義務化は職場単位で行われ、全てのアメリカ人に対する義務ではない。だからクルーグマンの主張は、(いまのところ)ややラディカルで、過激である。


さて、日本は・・・、である。

日本は新規感染者の増加に極めて強い拒絶感がある社会ではないだろうか?とすれば、考え方とすれば、日本は基本的にイギリスではなく、アメリカの流儀で抗体保有者を増やすのが本筋だという理屈になる。

ところが・・・

北海道でも行われ始めた旅行の「道民割り」、正式には「新しい旅のスタイル」と呼ぶそうだが、割引は有難いが分割された幾つかのエリア内の旅行に限っての話しだ。加えて、北海道コロナ通知システムに登録することが求められているが、ワクチン接種証明書(未接種は陰性証明書)の提示は義務ではない―申し込み時にワクチン接種済みであることを回答する欄があるのだが、接種証明書を持参せよとは記されていない。どうも、どこかが「生ぬるい」、というか「シャキッとしていない」というか、
公金をつかって割り引いてくれるのは有難いけれど、何らかの《衛生証明書》の提示義務付けくらいやったらどうなんですか? しないんですか? エッ、しない、それはなぜ?
どこかグジュグジュしている行政のこの姿勢が、日本の民間全体にも「感染」して、民主党から政権を奪還した安倍政権・菅政権の9年間、実質的に大きな決断はなにもしてこなかった。大事なことはほぼ全て先に延ばしてきた。嫌な事は先送りしてきた。防衛政策はともかく、こと日本経済に関してはホノボノ暖かい量的緩和、ゼロ金利政策に頼りっぱなしだった。まるで低血圧患者だけでなく、みんなに昼寝をすすめ続けるようなスタンスだった。金融業界、自動車業界など個別業界、個別タテ割り省益を超えた<日本国まるごとの護送船団政策>。こんな<グジュグジュ感>がまだ今もあるということを改めて実感しているところだ。

反対を説得してやる。反対を押し切ってやる。反対者に発生する損失は賛成者から補償を行ってでもやる。「反対があるのでやらない」というのでは、議員にはなれないし、なるべきでもないし、まして政治家をするのは無理というものだ。



 


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