2021年12月7日火曜日

ホンノ一言: 五輪の「外交的ボイコット」とは策に窮したのか?

来年2月開催予定の北京冬季五輪を「外交的ボイコット」するとの発表を米政府が行った。多分、英、加、豪などの英語圏諸国は同調・追随するのだろう。ニュージーランドは「我が道を行く」的な傾向があるのでボイコットはしないかもしれない。南アフリカはどうするのだろう?インドは?スリランカは?

いま民放TV各局が関心を高めているのは

日本はどうするの?

という問いかけだろう。これを放送すると、視聴率がほぼ確実に高まるはずだ。新型コロナのオミクロン株が日本で感染拡大するまでは、つなぎの話題に最適だ。そんな展望をもっているに違いない。

とはいえ、

外交的ボイコットとは何なのか?

小生は、それが分からない。

中国に五輪を開催する資格がないと判断するなら、選手派遣の公費負担などは中止するか、あるいは派遣そのものを中止するなど、きちんとボイコットすればよいではないか。

五輪を外交的にボイコットしても、五輪以外の場では外交関係を続けるという意志表示が即ち「五輪の外交的ボイコット」なのであれば、あえてそう宣言することに何か意味はあるのだろうか。五輪開催期間中に限って外交交渉は一時中断します、五輪が終わるまで暫時休憩、そういう主旨なのだろうか。正直そんな疑問を感じます。ところが・・・

日本社会の巷では

日本も外交的ボイコット、やるべし

の大合唱が一部で起きているようだ。

まあ、欧州のフランス、ドイツ辺りまで外交的ボイコット宣言に踏み切り始めると、一つの潮流になってくるのだろう。冬季オリンピックへの出場選手となればヨーロッパから参加する選手団は無視できない。そのヨーロッパの各国政府が外交的ボイコットを宣言すると・・・中国は落胆するかもしれない。それが世界にとって善いこととも思えないが・・・。特にフランスは近代オリンピック運動発祥の地である。ボイコットは創業の理念を否定する自殺行為だと観られるだろう。

まあ、あれなんだろうなあ・・・と思う。

黒船来航以降の「尊皇攘夷」、明治20年代の「朝鮮、討つべし」、「清国、討つべし」、「ロシア、討つべし」、昭和10年代の「米英、討つべし」。この流れの末にいまの『中国、たたくべし』の大合唱があるのは(小生の感覚では)分かりきった話だ。

この

△△、討つべし

というのは、半ば周期的に発生するかのような大地震に似て、日本社会の社会現象として、時に発生してしまうのだ。大合唱が「世論」であるかのように世を覆うが、しかし、実は内実は何も含まれていない。『討つべし』と叫ぶ対象に対して、何か具体的な理由をもって怒りの感情を共有しているかといえば、実は怒りなどの感情はなく、世間で騒いでいるから、その流れに自分も乗るしかない、これがありのままの状況で、たとえて言うなら《祭り》、《祝祭》と類似した社会現象である(とも言える)。

となれば、制御不能になる前に、たとえば年末の「第9」や「クリスマス」は大いに盛り上げる。札幌の「雪まつり」を盛大に開催する(実際、開催の方向であるよし)。「雪明かりの道」にも大勢の人を集める(これも開催の方向であるよし)。神社、寺院の初詣も大いに盛り上げる。春に向かって大規模イベントを盛り上げていく。これだけで、国内の大衆心理に蔓延する不穏な心情は雲散霧消して、来年2月の冬季五輪を平静に迎えるに違いない、と。

いまこんな風に思っている。

まあ、予想であるが、韓国は外交的ボイコットには追随しないだろう。インドもボイコットはしないと小生は予想している。となれば、タイ、ベトナムなどASEANも五輪をボイコットはせず外交の場に活用するのではないか ― 冬季オリンピックにどの位の選手が参加するかは分からないが。そんな中で、日本だけはボイコットするだろうか?多分、選手団に随行する政府関係者のランクを下げてお茶を濁すのではないだろうか。「ボイコット」とは言わないだろうが、そう受け取りたいならそう受け取るだろうし、そうではないと思いたいなら、ボイコットではない。「オミクロンも心配だしネ」というところになるのではないか?そして、その位の対処で何も害はないし、要するに外見が大事なのだろう。

近代オリンピック運動は、たとえ戦争当事国であっても、五輪開催期間だけは大会に参加しようという平和運動として発祥したものである。その理念は理念として高い価値があると思っている。相手国の政治の在り方に不満があるので、五輪をボイコットするという外交戦術を実行し始めたのはアメリカのモスクワ五輪ボイコットからである ― ヒトラー政権下のベルリン五輪をボイコットするべきかどうかで、アメリカでは激論が展開されていたのだが、結果として参加している。

アメリカの《五輪ボイコット》と中国の《不買運動》と、この二つにはどこか相通じるものがあると感じるのだが、そう感じるのは小生だけだろうか?

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