昨日は、米下院のナンシー・ペロシ議長が台湾を訪問する(だろう)というので、世界中が大騒ぎをしていた様子。その中で、日本のTV画面はコロナ第7波がメインの話題で、その辺は実に一貫して国内メンタリティ重視路線が貫かれていた。今日の報道では、ペロシ議長が乗った航空機の航跡を追跡する「フライトレーダー24」を台湾到着時には70万人以上の人が視聴していた、と。
フライトレーダー24のデータによると、ペロシ氏を乗せたとみられる米空軍所属の航空機は日本時間2日午後7時すぎにインドネシアのカリマンタン島付近、同午後9時半にフィリピン東方の海上を飛行した。中国が軍事拠点化を進める南シナ海上空を迂回して台湾に向かった。同機の航路を閲覧した人数は台湾到着時点で70万8000人だった。飛行時間は約7時間におよび、総閲覧者数は292万人にのぼった。
Source:日本経済新聞、 2022年8月3日 11:17 (2022年8月3日 12:30更新)
総閲覧者数が292万人というから相当の注目度であったわけだ ― 視聴者数の国籍別内訳などがあるともっと興味深いのだが。
この台湾訪問にはかなり批判もあったようで、NYTのコラムニストであるThomas Friedmanは"Why Pelosi’s Visit to Taiwan Is Utterly Reckless"というタイトルで寄稿している。
I have a lot of respect for House Speaker Nancy Pelosi. But if she does go ahead with a visit to Taiwan this week, against President Biden’s wishes, she will be doing something that is utterly reckless, dangerous and irresponsible.
全く向こう見ずで、かつ危険、無責任極まりないと酷評している。しかも、" against President Biden’s wishes"、つまり大統領の希望に反して、ということだから、共感の余地なしというところだ。結構リベラルなニューヨーク・タイムズでこうだから、あとは推して知るべし。
ただ、ここまで「愚か」というしかない行動になると、表面から判断してもよいのだろうかという疑問が生じるというものだ。
アメリカは<三権分立>を盾にして『行政府の長が立法府の議長に指示することはできない』、まあこんなメッセージを発して中国には冷静な対応を要請している由。
何だか胡散臭い。アメリカの政府はいかんとも出来ず、行ってはダメだとは言えない。が、アメリカという国家の意志は十分に分かったはずだ、と。中国から観れば、アメリカ政府こそ無責任の極みと映るに違いない。責任を持つべき国家元首は誰なのか、と。
ただ、北京政府はなぜこれほど怒るのだろう?(北京政府の言う通り)台湾は中国の一部である。仮にペロシ議長が深圳や南京、蘇州や天津を訪問したいと言えば、北京政府はウェルカムであったろう。台湾も中国の一部であり、アメリカ政府もそう認めているのだから、中国の一部である台湾を訪問しても怒る筋合いはないだろう。なぜ台湾訪問に限って北京政府は怒るのか・・・というのは屁理屈で、台北政府は自らの国旗をもち、総統を選び、法律も自ら制定して北京政府とは独立して台湾を統治している。つまり中国は今も中央政府に従わない地域が残る「内乱状態」にある。清朝初期、康熙帝の時代に発生した「三藩の乱」と類似の情況にある。その「賊軍」の拠点を訪問し、歓迎を受けるというのは、米国は北京政府に敵対する意志がある。ま、そんな理屈になるのだろう。が、それでも北京はワシントンに敵対する意志は持たないだろうと、小生は勝手に思っている。喜ぶのは、日本や東南アジア、インドであるのは明らかだ。戦前期・日本が苦労したように、これから中国は対米外交に苦しむ運命にある。
中国はモヤモヤした国際政治環境に追い込まれている。不愉快千万なことだろう。投資リスクは高まる一方だ。このままでは閉塞感が蔓延するだろう。いずれやって来る高齢化を考えると、お先真っ暗だ。これもロシアとの親密路線を死守しているからだ。そんな日和見主義、敗北主義が中国国内で頭をもたげてくるようなら、中国にとっては敗北の方程式になるかもしれない。
一口に言えば、(ホワイトハウスではないが)ワシントンによる恫喝である。ひょっとすると、今回のペロシ議長の訪台、ホワイトハウスと水面下では話がついているのだろう。
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