2024年4月12日金曜日

ホンノ一言: 予測や判断は一年もたてば全く違うものになりうる、ということ

アメリカのインフレが予想外に「根強い(sticky)」という特性があるので金利引き下げの開始時期も後ずれするだろうと。そんな予想が高まっている。その分、株価にもネガティブな影響が出ていたりするのが、足元のアメリカ経済だ。

コロナ禍の後の供給ボトルネック、ロシア=ウクライナ戦争の勃発、インフレ率の急上昇、FRBによる攻撃的金利引き上げ、そして景気後退なきインフレ終息でソフトランディングと喜んでいたら、どうやらそんなに簡単には事は運ばないようである。

昨年5月までのデータに基づいて本ブログでは投稿でこんな図をアップしていた:

投稿したのは昨年6月だが、その時は
このところの投稿でよく使っている図で、(薄いグレーの線は)対前月インフレ率の年率値である。太線は原系列をSTLによって成分分解して得られる基調値(=Trend+Cyclical成分)だ。図で明らかなように直近の5月時点で基調値は2パーセントを僅かだが下回っている。
と説明している。

ところが、本年3月までのデータを用いて、最新時点の図を描き直すと下図のようになる。



図を作成したJupyter Notebookには以下のようなメモを付したところだ。
対前月インフレ率をSTLで成分分解し、TC成分を原系列と重ねて描画すると上図のようになる。

これを見ると、昨年秋以降、TC成分は低下基調から下げ止まり、更には反転上昇へと動きを変化させたことが窺われる。そして直近時点である2024年3月のトレンド値は4.1%という水準に留まっている。

実は、昨年5月のデータを見ながら書いた6月時点では、
対前月インフレ率のTC成分は既に2%というインフレ・ターゲット値に戻っていることが分かる。

と書いている。

要するに、

このままの物価動向が1年間続くとすれば、1年後の前年比インフレ率は2%に収まってくるはずだ

という見通しだったのだが、その後、ほぼ1年間のデータをみて計算し直すと、ターゲット値である2%には収まりそうもない、4%位になる。これは認められない。そんな物価上昇がまだ続いている、ということである。

確かに、アメリカのインフレは終息には至っていない。

とはいえ、トレンド値を計算する時にどの程度まで長く遡ってTC成分を計算するかというパラメーターを非常に長めに設定し直すと、上の図はこんな風に変わる。




これは、まるで大雑把なヒストグラムに似て、傾向・循環成分の変化が明瞭に伝わらない。

ただ、非常に概括的にデータをみるなら、毎月のインフレが次第に収束しつつあるという判断は依然として可能であるとも言える。


同じデータを見るとしても、見ようによって色々な判断が可能だ。まして、新たなデータが追加されれば、以前の予想とはまったく異なったものになる。

景気予測と景気判断は科学というより、アートに近い側面があると言われるのは、こんなところだろう。








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