2024年4月29日月曜日

ホンノ一言: 足元の円安は純粋に貨幣的現象で、国力がないので仕方がないという話しではない

前稿を補足しておきたい。

というのは、前稿は足元の為替レート、特に円ドルレートに関するメモだったが、レートは通貨の交換比率だ。

世間でも雑談が繰り広げられているが、確かに通貨の交換比率にはそれぞれの国の実体経済の実力が反映される側面がないではない。

とは言いながら、レートはあくまでも通貨に関する数字である。

国力が弱くなっているから円も弱くなるンです。

と。そこまで断言するか、という指摘は当然あるわけである。

インフレもそうだ。小生はなにもフリードマンの信者ではない。が、しかし所詮はインフレとは通貨と商品との相対価値を示す指標だ。通貨の実質価値が低下すればインフレになるし、通貨の実質価値が高まればデフレになる。

そして、何事もそうであるが、豊富にあるものは価値が薄まり、量が不足すれば価値が高まる。時に不自然な状況が一時的にみられることもあるが、これは経済の根本原理だ。

日米のマネーサプライだけを見ておこう。詳細に立ち入るとキリがなくブログの覚え書きには馴染まない。両国ともM2の前年比増加率をとっている。

まずアメリカだ。


2022年の金融政策転換後、マネーサプライが急速にしぼられ、足元では前年比マイナスになっている。長期トレンドと比べても、アメリカのマネーサプライの増加は目立って抑えられている。

つまり、アメリカはコロナ禍後はインフレが進行したため「カネ詰まり」状態に持っていった。にも関わらず、実体経済の拡大が何とか続いている。そんな情況である。利益の見通しがあるからとも言えるが、そういう有望なビジネスが規制もされず、自粛もせず、何とか資金を調達して順調に伸びているということでもある。投資もそれと並行して十分に行われているわけだ。


次は日本。




日銀からダウンロードしたデータファイルは1980年1月以降であるため、横軸は日米で異なる。

図から明瞭に分かるが、臨時緊急的なコロナ禍期間中は例外として、インフレが高進しているコロナ禍後においても日本のマネーサプライは特にしぼられているわけではない。日本は通貨供給という面ではユルユルだと言える。

日本とアメリカとで、マネーサプライがこれほど違うのは、インフレを抑止しようという姿勢が根本的に違うためである。

というか、日本はいまデフレからインフレにもって行こうとする途中にある。つまり日本の意図は円の実質価値を切り下げたいのである。この理屈が分からないはずはない。

日本の通貨供給がアメリカに比べてこれ程まで緩ければ、円安になるのは当たり前である。日本はインフレを希望している国なのだ。アメリカはインフレを抑えようとしている。

故に、同じインフレでも円の実質価値はドルよりは大きく低下する。基調として、円安ドル高を予想するのは当然の思考である。

となれば、円を借りてから、円を売り、ドルを買って、海外で資産運用するのが得に決まっていると、みな考えるであろう。日米の政策方針が変わらない限り、返済時には円が安くなっていると予想されるからだ。

アメリカのインフレは次第に沈静化するだろうが、日本のインフレは沈静とは逆の方向を志向しているのである ― それにしては、日本のマネーサプライ増加は図を見る限りなお不十分に思われるが。ま、いずれ名目ベースの拡大をアコモデイトするため通貨が加速して供給されていくのだろうと予想する。

国力が云々という議論は(まったく無関係でないが)筋違いで、今の為替レートの動きは純粋に貨幣的な現象であると観ている。


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