2012年3月25日日曜日

日曜日の話し(3/25)

よく「夢のような暮らし」とか、「これが夢でないことを願う」という言い回しがある。よほどヒト様は、夢の中では願いがかなって幸福であるのかなあ、と思ってしまう。小生は、夢の中では概ね不幸である。母も淋しさと諦めにみちた表情をしている。父も悲しそうな顔をしている。妹とは言葉をかわすこともない。目が覚めると、ああ夢であったのかと知って、むしろ安心をする。現実は、夢ほど不幸ではない。夢のように悲しくもなく、淋しくもない。夢の中で不幸を十分経験している、そんな夢を数多く見るのだ。

それは、現在、小生が十分幸福であるという理屈になるのか?分からない。

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東日本大震災では、結局、約2万人の方が亡くなった。犠牲者数は巨大だ。しかし、太平洋戦争中の「大日本帝国」の犠牲者は、戦闘員が174万人、民間人が39万人、合計で約210万人と言われている。太平洋戦争に限定せず、第2次世界大戦全体でとなると、諸説あるものの、枢軸国側が軍民合計で1200万人、連合国側が軍民合計で約5000万人とされている。連合国の犠牲者数が多いのは、ソ連国内の犠牲者が膨大であったためだ。とにかく戦争の災禍というのは、想像を絶する規模である。

悪夢を時々見ることがある。家族と一緒に、何かガレキというか、家が全て倒壊した中を、家族を連れて住むところを探しながら放浪しているのだ。とある古い建物に入る。二階に上がり周囲を眺める。夜になると、どうしてだか水が出るので、なぜか残っているステンレスか何かでできた浴槽に水を張ろうとしたら、ゴキブリのような虫が一面這いずりまわっているのだ。で、意識が覚醒して夢だと知る。現実は昨日のままだと知って安堵する。そんなことがある。

太平洋戦争の犠牲者2百万人は、巨大であるが約1億人の日本人に対して2%程度だ。しかし、小生、いずれは総人口の半分が死に絶える。いや、生き残る人は、せいぜい3分の1程度であるような、そんな神による過酷な懲罰とも形容されるであろうような大災害も、いつかは起こりうるものと考えている。というか、これに類したことは実際に起こったことである。

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それは14世紀のヨーロッパで発生した<ペスト流行>である。最近は16世紀の話しを続けていたが、14世紀はもっと以前だ。日本では鎌倉幕府が滅亡する頃である。13世紀にジンギスカンのモンゴル帝国が誕生して、カスピ海以東のユーラシア大陸全体がほぼ統一されてしまった。モンゴル帝国の通貨が国際通貨となり、それが契機となって商業の大発展が見られたが、それによってペスト菌という病原菌も広く移動できることになった。Wikipediaによると、ペスト菌のヨーロッパ上陸年まで具体的に分かっているようだ。このペスト禍が過ぎ去ったあと、ヨーロッパの当時の人口は大体半分になっていたということだ。3分の1にまで減っていたという説もあるようだ。2000万人ないし3000万人がペストで病死したことになる。1348年の第一次流行から14世紀末に至るまでのことだ。これまた第2次世界大戦程の絶対数ではないが、総人口に対する割合で測れば、14世紀のペスト禍のほうが遥かに大規模であった。

労働人口がこれだけ減少すると、賃金が高騰して余剰生産物が残らないため封建領主の農業経営は困難となり、それが農奴と地代に依存した騎士階層の没落を早めた。特に小規模騎士階級は、経済基盤を失い、結果として大貴族への富の集中が進んだわけだ。英国では、農業から牧畜への産業構造シフトも進行した。人口構造の大変動は、必ず経済構造を根本的に変え、ひいては価値観、文化のあり方までをも変えてしまう程のパワーを持っているわけだが、14世紀欧州においては、その原因はペストという病原菌であった。

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14世紀という時期は、イタリア・ルネサンスの特徴が現れ始めているとはいえ、なお萌芽期であり、文化史上の大きな潮流はゴシック文化であった。<ゴシック>というのは、盛期ルネサンス時代のイタリア文化人が半ば軽侮の念をこめて使い始めた蔑称であるが、現在ではネガティブな意味合いはなく、むしろロマンチックな響きと感性を帯びた言葉になっている。

ピエトロ・ロレンツェティは、当時のシエナ派に属するイタリアの画家である。下はアッシジのサン・フランチェスコ教会下堂に描かれているフレスコ画『最後の晩餐』である。ロレンツェッティの代表作とされている。


Lorenzetti , The Last Supper, 1320
Source: Web Gallery of Art

ピエトロ・ロレンツェッティの弟アンブロージョ・ロレンツェッティもまた歴史に名を残す美術家である。その兄弟二人とも1348年に死亡している。前年にシチリア島に上陸したペストがイタリア本土で流行し、それに二人とも感染して亡くなったことが容易に想像できる。

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