2020年2月22日土曜日

一言メモ: ダイヤモンド・プリンセス船内隔離について今いえること

クルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号の顛末は、ニュースやワイドショーが連日とりあげていて、一大騒動になっている。そして、とうとう新コロナ型ウイルス感染者の死亡例まで発生するという段階に至っている。今後、国内感染が一層広がることが予想されている。

クルーズ船検疫をめぐる今回の対応振りは詳細に検証されるに違いない。検証されれば、あらゆる細部にわたって報告書が作成されるに違いない。ただ、作成された大部の報告書を精読する人がどれほどいるかは分からない。提言されるはずの多くの細かな事柄が何年先になるか分からないが次回発生する緊急事態までどれほど継承されていてそこで生かされるのか、まったく心もとない。今回の経験についての検証それ自体は一生懸命に行われ、報告書を書く人も真剣に取り組むだろうが、検証それ自体が目的となってしまう事態も大いに予想される。

何事も<選択と集中>である。責任問題はともかくとして、いまの時点で気がつくことがあれば、気がついた時点で発言し、認めることは認めるという姿勢が業務のPDCAサイクルでは最も大事な事である。<重点志向の原理>を忘れてはならない。

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一つだけ記しておきたい。

香港で下船した乗客が新コロナ型に感染していたことから、ダイヤモンドプリンセス号の再度の検疫が必要になった。

ところが3700人を超える乗客・乗員を検疫のために滞在させうる施設がない。

そこで全員を船内隔離する方針が決まった。

この選択には合理性があった。国内外の誰もが理解したと思われる。

しかし、新コロナ型ウイルス感染が憂慮されるが故に全員を船内隔離するのであれば、検疫体制の整備と併せて十分な医療体制をも確保しておくべきであった。この二つは切り離すことができない二大要素であったはずだ。投入するのであれば同時投入するべきであったのではないか。

実際は、2月3日夜から検疫が開始されたのだが、船内の医療体制の不備を補うため災害派遣医療チーム(DMAT)が投入されたのは2月9日ではなかったか。

この間1週間。

現実には、検疫、医療双方においてキャパシティ不足に悩みぬいた2週間となった。検疫が不十分でも医療は十分にできなかったか。医療の不十分が与件となるのであれば、検疫も不十分なレベルで覚悟せざるをえなかったのではないか。最も合理的な救助作戦は何であったのか。色々な設問がありうるだろう。

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発生源である中国・武漢市が交通遮断され封じ込め作戦が発動されたものの、遮断と同時に確保するべき十分な医療資源が武漢市内にはなかったために市内は大変な惨状を呈することになった。遮断作戦を発動するなら、十分な医療資源を同時かつ即時に投入するべきであった。その失敗と混乱を見ているにも拘らず、ほとんど同種のことをダイヤモンドプリンセス号を舞台に演じてしまった。この指摘は免れないのではないか。

『今回の対応は船籍、運航会社、寄港地が異なり複雑な意思決定の下で対応せざるを得なかった。現実の過程において政府の対応にも反省すべき点はあったと思う。この点については遺憾に感じている。今後同様の事態で適切に対応できるよう真摯に検証していきたい』と、この位のことは国会か、記者会見か、どこかで言っておいたほうがいいのじゃないかネエ。

今回の対応に間違いはなかったといえば、確かに「間違い」はなかったかもしれない。しかし、改善できる余地はあったはずだ。

どんな組織でも「カイゼン」の必要性の指摘それ自体までを否定するような姿勢では、旧・日本軍とまったく同じ体質で、部内の士気が退廃するばかりだ。いずれ大崩壊することは確実である。


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