それにしても、大統領選挙運動がいよいよ始まるかというこの時機にこんな戦術に打って出るかネエ、というのが小生のイメージなのだが、こんな受けとめ方は世間的には偏っているのだろうか。
というのは、
これに関して共同通信は以下のような報道をしているのだ:
【ワシントン共同】米上院の弾劾裁判での無罪評決から一夜明けた6日、トランプ大統領はホワイトハウスで演説し、弾劾裁判について「地獄をくぐり抜けた」と振り返った。弾劾訴追を主導したペロシ下院議長(野党民主党)らを「邪悪」「うそつき」「ひどい人間」と約1時間にわたり罵倒。反省や国民への謝罪の言葉は一切なかった。【 2020年2月7日 6時12分配信】
『反省や国民への謝罪の言葉は一切なかった』というのは、日本人であれば極々自然な受けとめ方になるだろうが、これはロジカルではない。
そもそもト大統領は全て否認していたわけである。ロシア疑惑を調査したムラー特別検察官による報告書でも、大統領の罪を問えるだけの十分な証拠はないと結論している。にも拘わらず、大統領弾劾を発議したのは政敵である民主党議員であった。「無罪」と評決された後に、ト大統領が「謝罪する」と発言すれば、何を謝罪するのかという議論になる。疑いをもつのは政敵の側の自由意志である。政敵が疑惑をもったことに対して、持たれた側が謝罪すれば、それこそ政敵の「思う壺」というもので「お人好し」に過ぎよう。濡れ衣となった疑惑を世間に広めた側(=民主党)が謝罪するならまだわかるという理屈になる。
「世を騒がせしこと、余の不徳のいたすところ、このとおりじゃ」と国民に向かって頭をさげるのは、日本的感覚では奥床しい動作であり、それでこそ啓蒙専制君主たりうるのだが、民主主義政治のロジックとしては可笑しい。君側の宰相が「上様が頭を下げるなどもったいのう御座います」と、そんなヤリトリを期待したいのかもしれないが、時代劇の見過ぎである。現代社会は殿中の作法が支配するアンシャン・レジームではない。ト大統領は持たれた疑惑を手続きに沿って晴らしてきただけである。謝るべき対象はない。
ト大統領の立場からロジックを通せばこんな主張になるのではないか。
日本の通信社はどうやら米国の野党にシンパシーを感じているようだ。しかし、今秋の選挙で米政権が交代するとして日本の対米外交がより有利になるとも言えないだろう。そもそも米・民主党は共和党と比較すれば伝統的に親中的である。やはり報道はニュートラルな立場に立っておく方がよい。
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