ところが景気後退は来そうで来ない。米国株価は歴史的高値圏に停留したままで一向に下がらない。
不思議だった。
ところが、いよいよ景気後退局面が始まりそうな兆候もある。もし今後、景気後退に入れば「コロナ不況」と名付けられるだろう。
既に感染防止の観点から物的、人的両面で国際的流動には急ブレーキがかかっている。世界の製造センターである中国から発した新型ウイルスであったことから、中国内生産拠点の生産再開が遅れ、世界のサプライチェーンが寸断されている。中でも、インドの製薬業界では中国から輸入している薬剤が供給不足に陥っており、そのため今後ヨーロッパで新型コロナウイルスが蔓延した場合に、治療薬が不足するのではないか、死亡数が増えるのではないかと懸念されはじめた。
恐怖指数(Vix)は短期的な市場ボラティリティ(変動範囲)を予想するインデックスとして参照基準になっている。具体的にはNY市場で取引されている「S&P500のボラティリティ指数」を指す。
その最近15年間の推移は下図のようになっている。
URL: https://www.barchart.com/futures/quotes/VIH20/interactive-chart
既にVixは35を超え、2015年夏の「上海ショック」を超えてきた。その前となると、2011年秋口である。
2011年・・・何があったか?日本では勿論「東日本大震災」が3月11日に発生していた。
Googleで2011年中に発生した事件・イベントを検索すると:
- 2月にエジプトのムバラク大統領が辞任、8月にはリビアのカダフィ政権が崩壊するなど「アラブの春」が進んだ。
- 大地震は東日本大震災だけではなく、その前の2月にニュージーランド・クライストチャーチでも大地震が発生していた。
- 東日本大震災そのものもショッキングであったが、福島第一原発のメルトダウンがもっと衝撃的であった。その後、日本が原発を稼働停止。イタリアも原発再稼働を中止し、エネルギー面で大きな変動が予感された。
- 5月には米国オバマ政権がアルカイダのビンラディンを殺害した。7月にはノルウェーのオスロで連続テロが発生した。
- 8月には円ドル相場が75円に突入した。
- 秋口を過ぎると、タイ全土で洪水があったりしたが、世界を揺るがす大事件は次第に少なくなり、11月には野田首相が「TPP交渉参加」を表明。年末には「福一冷温停止状態」が宣言された。
こう列挙すると、確かに2011年という年、特に前半は「多事多端の年」であった。その2011年の10月、Vix指数は一時45を超えている。
更にその前の山となると、いうまでもなく「リーマン危機」である。
今回のVix指数急上昇をもたらした直接的要因は「新型コロナウイルス」の感染拡大である。しかし、流行病の蔓延はそれ自体としては一過性のショックであり、多数の人は終息後の回復を予想しながら計画を立てるはずである。加えて、ウイルスそれ自体は新型とはいえ、それ程の重篤に陥るような凶悪な病原ではないことも明瞭になりつつある。
Vix指数上昇の原因は、ウイルスそれ自体によるものというより、中国に依存した世界的サプライチェーンの脆弱性が露見したことによる経済的不安だろう。脆弱性への認識、つまりリスク・プレミアムの上昇が資産価格全般を下押しし続けるだろう。
今後、本格的に景気後退局面に入れば、株価は更に3割以上は低落するだろう。アメリカのダウ平均は今年2月11日の29551ドルから19800ドル近辺、大雑把に予測すると2万ドルを割り込む可能性も予測範囲には入れておくべきかと思われる。崩落は始まれば急速に進む。が、それがいつの時点で始まるかまでは分からない。ただ、中期的な景気後退から株価急落が始まれば、平均的には1年半程度は弱気相場が続くのが経験則である。リーマン危機でもその経験則に従って2007年末のピークを経て2009年春に株価は反転した。
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