2020年11月14日土曜日

閉塞感と無力感の責任は野党にあり

 貧弱な野党しか存在せず、その結果、日本人には政策の選択肢がないという点にこそ、政治に参加できない日本人の不幸がある。

眼前の問題に対して現政権が実行しつつある政策以外にどのようなアプローチがあるのか、それが<提案されない/されてない>という状況がずっと続いている。

政府の政策が「ベスト」であるとは誰も思っていないのに……。期待を裏切り続けているこの現実に、マスメディアはもっと真剣に怒らなければならない理屈なのだが、政府を批判するという面では仲間同士であるせいか、とにかく評価が甘いのである。大甘である。

世論調査で内閣支持率がなかなか下がらず、支持する理由として『ほかに適当な人がいない』というのは、与党内の他の政治家というより、野党に向けた絶望を表すものだと小生は思っている。

ところが、

(野党を代表する?)立憲民主党の枝野代表は、政党別支持率が4%程度であるにも拘わらず、『政権を渡してほしい』と公の場で盛んに発言しているそうだから可笑しくてたまらない。与党のうち自民党の支持率が25%強、公明党が3%弱であるにもかかわらず、だ。それでもなお「政権を渡しなさい」と堂々と求める姿勢は、日本人特有の「恥の心理」とは無縁の、我が信条に忠実な「良心的政治家」であるとさえ思わせてくれるから、ホント不思議である。

とはいえ、国民に広く支持されていないにもかかわらず「政権」を要求するというのは、民主主義に反しているのではないか?支持されるような活動を先にするべきではないか?『少数派が権力を奪おうと考えること自体が、共産党風で革命志向的であり、国民の支持を軽んじる非民主的な態度ではないか』と、厳しく非難されてもおかしくない。小生はそう思っているのだが、不思議なことにとやかく言う人はいないようである。可笑しいネエ…と思っているところだ。

ここ日本では野党の評価が大甘である。これでは鍛えられない。現状で満足する。真剣に活動しない野党は消してしまう位の真剣な気持ちをこめて、マス・メディアには頑張ってほしいものだ。

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日本人の政治的不幸を少しでも解消したいなら、野党は努力をして「シャドウ・キャビネット」くらいは公表するべきだろう。そして、問題ごとに与党が推進しつつある政策に対して、常に対案を公表して政府に論争を挑むべきである。そうすれば、日本人は常に問題解決のために複数の選択肢があることが分かり、閉塞感が軽減されるのだ。

戦前期の首相・若槻礼次郎の自伝『古風庵回顧録』を読むと、晩年になってからの1930年代、次第に横暴を募らせる陸軍に振り回される苦悩がヴィヴィッドに叙述されている。しかし、戦前期の軍部も第一次世界大戦後の平和第一主義の時代、世界的に軍縮が進む中で、職業軍人は本当に肩身がせまい思いをしたことが伝えられている。その陸軍が、政争に明け暮れる政友会と民政党の既存政党をよそに、第3極として日本人に認められる分岐点となったのは、昭和9年(1934年)に公表された『国防の本義と其強化の提唱』、通称『陸パン』であろうと観ている。確かに、戦前期日本の政党政治は二大政党とはいえ、いずれも有産階層に基盤をもっており、真に日本人全体の願望に応える意欲はなかったとはいえる。党争の果ての金融恐慌、金解禁と昭和恐慌など、失政が甚だしかったとはいえる。しかし、最終的に戦前期の政党政治が崩壊して、日本人が軍部主導政治を受け入れたのは、「政党政治」の現実に対する失望に加えて、軍縮で雌伏してきた陸軍が日本人の心情に訴える声を発し始めたからである。結局、日本人は軍部を選んだのだ。

その職にありながら為すべき事を怠る者は淘汰され、為すべき事を為す者が実権を握る

この原理・原則は、時代を超えて普遍的であり、常に現実となって現れるものだと、小生は思っている。軍国主義云々の議論だけでは一面的である。

はるか昔の「大衆団交」を模倣したような「対官庁・野党合同ヒアリング」などはパワハラにも見えるし、見苦しい。カビが生えたような団体交渉を思い出す。キッパリ止めて、国会による政策立案研究に必要な「国政調査ヒアリング」に切り替えるべきだろう。世代交代をして全体をリフォームするべきだ。そうすれば、官僚の中にも共感するグループが形成され生きた好循環が始まるだろう。

スキャンダルで内閣支持率を落とす戦術は、日本人に未来の提案をするものではなく、むしろ不安と絶望感を深める作用がある。政府の不祥事を非難する戦術を採用するためには、政府の支持率を低下させた後に自らが替わって進めようとする政策案をあらかじめ公表しておくことが大前提だろう。それをせずに、ネガティブ・キャンペーンを展開するから、政治不信が深まるという結果になるのだ。

まさか「政府から認めてほしい、政府に賛成してほしい」などと願ってはおるまい。敵対するなら、やりたいことが違うという理屈なのであるから、どこでどう敵対しているのか、内容を示すのが第一歩だ。

分からんかネエ、この理屈・・・高校生でも分かるゾ、と思ったりする今日この頃だ。

行き場のない閉塞感、現実を受け入れるしかない無力感は、さぼっている野党に責任があると小生は思っている。

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