感染が拡大すれば「自粛」へと傾き、感染が落ち着けば「経済」へ傾く。『バランスが本当に難しいです』と、いつまで迷っているフリをするのだろう?
カミさんとはこんな話をした:
小生: 「経済」なんて、どうしてこんな抽象的な言葉でお茶を濁すんだろうね。「みんなの仕事の数」って言えばいいんだよ。
カミさん: 仕事の数って?
小生: 「経済を抑える」というのは、要するに仕事を抑える、客を減らす、注文を抑える、要するに、みんなの仕事の量を減らすってことだよ。仕事から外される人を増やすってことなんだよ。
カミさん: 確かにねえ、でもそうしないとコロナの感染は減らないんじゃない。
小生: 歌舞伎町でもススキノでもそうなんだけどサ、いくら注意しても言うことを聞かないホントに心配な店は、もう最前線の担当者には頭に入ってるんだよ。そんな店をターゲットにして、夜中にマスクをせずに盛り上がっているその最中に、突然踏み込んでサ、『これから緊急衛生検査を始めます。この部屋を出ないでください』ってね、店の経営者には『衛生検査令状です』とか、もしこんな行動がお上に許されればね、これは感染予防には正に一罰百戒ってものになるさ。ススキノが感染拡大の核になるって状態は、絶対確実に止められる。これは間違いないよ。
カミさん:「令状」って、そんなのないでしょ?
小生: そこさ、問題の本質は!できないんだよ、今の法律では。憲法上できないってことはないと思うんだけどね、みんなが助かるんだからさ。踏み込まれた店以外の店は、一生懸命にガイドラインを守ってるんだから、何のお咎めもないんだしね。でも、これが出来ないのさ。
カミさん: 決めればいいんじゃないの?
小生: それが、この程度の感染じゃあ、できないのさ。イタリアとか、ニューヨークの状態になれば、日本人も目が覚めるんだろうけど、知事は選挙があるから『そこまでやる前にみんな頑張ってくださいヨ』としり込みするだろうし、国は国で所詮は札幌という一都市、新宿という一区域のことだしね、『知事や市長に頑張ってもらおう』ってことになるんだよ。
もちろんススキノや歌舞伎町はシンボリックな地名である。本当に「心配な店」もあれば、「心配な客」もいる。「心配な人たち」、「心配なイベント」、「心配な旅行者」、「心配な病院」、「心配な高齢者施設」、「心配な会社」など、いろいろある。衛生管理の不備についての「内部通報」を奨励してもよい。これらはまだ面的に広がっている状況には至らず、点として存在し、かなりの部分は最前線の担当者は気がついている(はずの)ものである。もう点ではなく、一部地域では面であるとする認識もあると思うが、であれば猶更のこと「衛生指導」、「衛生検査」の法制化、組織化は感染抑止に大いに貢献するであろう — お上の権限を強化する一種の「焼け太り」ではあろうが、そうせずして効果的な方策があるなら、そちらを選べばよい。
要するに、新型コロナ(だけではなく今後予想される感染症)について、その感染拡大を防止する「切り札」は、日本にはまだある。だから、日本としてまだまだ勝負できるわけであり、この点は安心してもよいと思っている。たとえ、「切り札」が「最後の手段」であるとしても、「お手上げ」よりは余程マシであろう。
数日前の投稿で
感染拡大の核になっている営業形態が確認されているのであれば、それをターゲットにして感染抑止のための政策資源を集中投下するのが行政オペレーションとしては効率的である。
と書いた。
感染拡大防止という目的を追求するには、民主主義の確保にとって最適である政策を実行するのではなく、副作用を怖れずに感染防止という目的に最も効率的な政策を実行するべきである。
とも書いた。
いま「感染抑止」と「人権擁護」という複数の目的がある。一般に、複数の目的を同時に追求する場合、複数の政策が必要となるので、各政策と各目標の割り当て方が主たる問題になる、というのが経済学者ティンバーゲン=マンデルが提起した問題である。各政策は単一目的の下で実行するべきである。これが結論だ。即ち、「公衆衛生政策」は「感染防止」という単一目的を達成するうえで最も効率的な手段を選ぶべきだ。「人権擁護」も加えた複数の目標を「公衆衛生」によって同時に追い求めるべきではない。「人権擁護」は「公衆衛生」とは別の独立した政策によって担保するべきである。これが基本的なロジックになる ― 但し、この基本的なロジックは「すべて政策はいずれをみても民主主義的で、人権尊重に適うものでなければ、違憲である」とする法律家の論理とは衝突するかもしれない。
こんなことを書くのは、『 みんなで我慢をしましょうと言うのは、耳に心地よいスローガンではあるが、つまりは感染拡大現象とは何の関係もない人々をも巻き込む「(意図せざる)連帯責任論」になっている』。この発想には情け容赦がない。そう思われるからである。
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