2020年11月17日火曜日

ホンノ一言: 現代中国の「王安石」になるか?

 中国・北宋の改革政治家といえば、何と言っても「王安石」である。

経済的繁栄を謳歌した北宋王朝であったが、11世紀末葉にもなると経済格差と支配階層への富の集中が進み(経済発展が進むと必ず格差は拡大するものだが)、社会が不安定化した。王安石が様々の新法を実施して歪の解消を目指すことを皇帝・神宗から委ねられたのは、皇帝もまた問題を認めていたからだ。時に1069年。

しかし、トップダウンの急進的な改革に対して強固な支配層であった官僚階層は猛烈な反・王安石批判を展開した。王安石は孤立し偶々発生した大旱魃が引き金になって政権の座を失うことになった。1074年のことである。執政の座にある事、5年。

その後、宰相に復帰することもあったが気力衰えた王安石は1076年職を辞し引退することになった。しかし王安石が始めた改革政治は時代の要求にも合致しており、皇帝・神宗が在位中は一貫して進められ、その多くは目的を達することになったとWikipediaには解説されている。ところが、皇帝・神宗が退位した後は、新法派(≒リベラル派)と旧法派(≒保守派)の対立が激化し、その派閥抗争が北宋王朝そのものの衰退を招いたとも言われている。

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現代中国における習近平についてはこんな報道もある:

中国は2035年までに経済規模を2倍に拡大するとの目標を示してから、最も価値ある自国企業の一部に対し徹底した監督に乗り出した。フィンテック企業アント・グループによる350億ドル(約3兆6600億円)規模の新規株式公開(IPO)は突如中止となり、その直後にはテクノロジー時代の寵児(ちょうじ)となっていたテンセント・ホールディングス(騰訊)やアリババグループの抑え込みに向けた独占禁止規定の強化が公表された。

出所:Bloomberg2020年11月17日15:50配信

中国が直面する最大の課題は何より《格差解消》であって、共産党が主導する中国にあって格差解消の重要性は日本をはるかに超える理屈である。共産主義とは資本主義のデメリットを解決するための経済体制であるのだから。

経済的に成功を収めた財閥を抑え込めば共産党原理主義には適う。が、必ず反発が生じる。一般に、経済的リアリティと政治的理想が正面衝突をすれば敗北するのは政治的理想の方である。理想が敗北するだけではなく、国内社会の分断、対立を激化させるという負の作用も長引くものである。

習近平が格差解消に失敗すれば、共産党は習路線を否定し、政治的敗北を認めるしか道がなくなる。が、その後も弱体化した共産党政権の内部で長く激しい派閥抗争が続くだろう。この道を辿りたくなければ、そもそも資本主義導入によって共産党の終末を免れえた経緯を振り返り、潔く民主化へ舵を切り、複数政党制と普通選挙を認めるしか道はない。

長く激しい派閥抗争か、あるいは民主化と普通選挙の導入へと舵を切り、党の名誉と国の繁栄を得ることの引き換えに共産党の緩やかな風化と衰頽を受け入れるか。

中国共産党をまつ未来は決して明るいものではない。


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