今回のウクライナ紛争を和名では「ロシア・ウクライナ戦争」とでも呼ぶのだろうか ― 正式な「宣戦布告」をして正規軍どうしで戦闘を展開するかどうかが不明なので「戦争」にはなり難く、むしろ「事変」という方がベターだと思うが。和名では「露西亜」と「烏克蘭」になるから《露烏事変》という辺りに落ち着くかもしれない・・・そういえば、戦前期・日本が突然に起こした《満州事変》。守るべき権益の存在、相手国の敵対的性向、外交交渉の不毛、相手国が取り結んでいる同盟関係、軍事オプションと相手側の油断、好機の到来。「満州事変」と「露烏事変」。両者は何となく似ているところがあるような印象がある。
ま、満州事変と似ているというのは、プーチン大統領にとっては極めて不吉であるに違いない。
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日本国内のTVのワイドショーではこの話題でもちきりだ。
ずいぶん昔の思い出話になるが、アメリカとその同志がイラク・フセイン政権打倒のため「大量破壊兵器(=Weapons for Mass Destruction)」を口実にして空爆を開始した時も、日本のTV各局はまるで戦争ゲームさながら、火と轟音がとどろく映像を何度も流していたものである。多分、現地に張り付いているメディア関係者に攻撃中の現地司令部がサービスとして提供したものであったのだろう。
いま思えば、あの空爆の中で命を奪われる人たちが多数いたはずであったのに、悲劇である側面をあまり意識することなく、むしろそれをサカナにテレビ・サーフィンをしていたわけで、要するにメディアの視聴率競争にまんまと参加してしまった。この点、当時のわが身を振り返ると、内心忸怩たるものがあるわけだ。
ただ、「イラク戦争」について当時の事を思い出すと、先制的な軍事オプションを選択したアメリカ、および追随したイギリス、オーストラリアなどが世間で非難されたということはなかったように思う。先制攻撃に合理性はあるのかどうか異論や反論は多々あったようだが、少なくとも日本国内の一般視聴者は非はイラクの側にあると思い込まされていたように思う。実際には「大量破壊兵器」というのは「開戦の口実」に過ぎなかったことが、その後になって確認されている。「バグダッド空爆」は2003年の事件だから、もう19年も前のことだ。19年しか経っていないとも言えるが、戦闘自体は短期間のうちに終息したものの、その後の戦後処理に時間を要し、結局、米軍が完全に撤収するまでに8年余を要した。「戦争は政治の継続なり」とは言うものの、武力攻撃は決してコスト・パフォーマンスの良い政治ツールではない。
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今日もワイドショーでは海外の特派員と交信しながら、さながら「イラク戦争」のような臨場感ある「戦争中継」をしようと民放各局はいかにも頑張っているが、悲しいかな日本のTV局の実力不足、取材能力不足、貧困なネットワークもあるようで、『新しい情報があれば教えてください』とMCが連呼するばかりであるのが、いかにも情報貧国・日本を地で行っているようで憐れな感じがする。
小生: 大した話は出来ないのに、なんでこの話題を引っ張るのかネエ・・・
カミさん: みんな視るのかなあ?
小生: 面白がって視る人が多いって考えてるからこそ、取り上げるんだろうネエ。
カミさん: 戦争になるの?
小生: アメリカは「プーチンは戦争を選んだ」って煽っているけど、昔のような戦争にはならないヨ。ウクライナがそもそも内部分裂して割れているみたいだし。それにプーチンさん、軍人出身じゃないんだよね、スパイ出身だよ。正面から戦車を送り込んで首都キエフを占領するなんて発想はしないんじゃないかなあ・・・
カミさん: そうなの?
小生: それよかウクライナ政府中枢部に内通者をつくってサ、いまのゼレンスキー大統領をどうかするんじゃないかと予想しているけど・・・
カミさん: どうかするって、怖いなあ・・・
複数の大都市で爆破事故を頻発させているのは、(あとになって該当する地にある軍事施設が攻撃されたとの報道があったが、やはり)後方攪乱であるし、心理戦術である。焦点が定まらず限られた軍事資源が集中できない。専守防衛は資源消費的なのである。そもそも現在でもゼレンスキー烏・大統領は支持率が低いそうだ。軍事、諜報にも素人だ。ウクライナ国内で信頼を失うのは時間の問題であると小生は予想している。
イラクのサダム・フセイン大統領は逃亡の果てに悲劇的な最期を迎えたが、烏・大統領も失職か、失踪か、あるいはもっと悲惨な暗殺といった可能性も考慮に入れる情況だと観ている。北部国境の向こうで待機している露軍は、降伏か、和平交渉が始まった後にウクライナの要請を受けてキエフに進駐するか、あるいは進駐せずに国境地帯に留まる計画なのではないか。
包囲され制空権も奪われた情勢ではウクライナはかなり困難だろう。それでも何が起こるかは分からない。理詰めの敵勢力が予想する以上のスピードで機動させ東部の戦闘地域に兵力を集中させることに成功すれば、劣勢のウクライナが意外や局地的戦闘で勝つ可能性はゼロではない。仮にそんな事態が起こるとすれば、ロシアが被る打撃は計り知れないほど大きいだろう。1982年のフォークランド戦争でも英海軍は予期せぬ損害をかなり被っている。
勝負ごとは終わるまでは分からない。
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ウクライナがNATOに既に加盟していれば、ロシアも今回のような手は打てなかったはずだ。というより、ロシアと紛争を起こしておきながら、NATOへの加盟を希望するなど、ドイツ、フランスが対ロシア戦争の可能性を覚悟するはずはなく、その心理はポーランド、ハンガリー、ルーマニアなども同様だろう。ロシアと極めて近い関係にあるウクライナがNATOを志すというロジックにそもそも無理があったと思われる。
ずいぶん昔に経済学者・森嶋通夫氏が《無抵抗平和主義》を唱え、仮にソ連が本気で日本に侵攻してくる場合、日本は徹底抗戦して、莫大な人的・物的資源の犠牲を被るよりは、むしろ早期に無条件降伏をして、ソ連圏の中で有力な地位を占める方が合理的である、と。こんな提案を行って、その頃の世間で物議(?)をかもしたことがある。アメリカと軍事同盟を締結している日本においてすら、こんな議論が実際にあったことが大事なのである。ウクライナとロシアとの関係、地政学的状況を考えれば、
ウクライナにおいてをや
だと思う。一方の当事者であるウクライナの外交能力・政治能力が今回の紛争に濃厚な影を落としている。そう観ているところだ。
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