2022年2月27日日曜日

感想: 「ロシア版文禄慶長の役」になるかも

 ウクライナ紛争がウクライナ事変になり、もはやウクライナ戦争に近い情況になりつつあるようだ。

ウ軍は欧米から最先端兵器を供与されていたからか、優勢なロ軍を相手に予想外の善戦をしているようで、ロ軍側にも予定以上の死傷者が発生しているとの報道がある。もしそれが事実なら、仮にウ・ロ国境に動員したロ軍が15万人として死傷者が1万人を超えるなら「論外」で政治目的を達成しても実質的にはロシア側の敗北。5千人程度に収まるとしても軍事的には「失敗」。もっと少なく2千人程度に収まるとしても、政治的選択としては「失政」であったとロシア国内では評価されるだろう。

昨日(か一昨日)は1日で500人程度の死傷者がロシア側に発生した報道がある。特に北部国境から侵攻したロ軍が激しい抵抗にあっているようだ。

独立を承認した東部の親ロ政権の要請をうけて、先ずは東部を押さえるくらいにして、あとは三方から大包囲してキエフ政府内の内通者に行動させる、そんな展開を予想していたが、急戦狙いの「力攻め」をするとはネエ・・・多くの専門家も予想できなかった模様だ。これが本当にロ軍参謀本部が立案した作戦なのだろうか。分からん。

老化して頑固になった独裁者が無理な出兵を主張して、周辺の側近も困り果てたとすれば、これは21世紀の《ロシア版文禄慶長の役》である、な。先日の投稿では「満州事変」に例えたが、その比喩は撤回する。

最終的には、何年以内とは確言できないが、ロシア国内でどういう形でか権力の移動が起こる可能性が高まった。日本でも文禄慶長の役の後、豊臣から徳川へ権力が移動した。このロジックは時代と国を超えて普遍的であると思う。

死傷者が千人を超える辺りからロシア側の戦意が落ち、2千人に達する時点で「政治不安」が醸し出されると予想する。

ウクライナの現政権は、結末のいかんを問わず、終戦後かその前かに信頼を失うだろう。これも予想しておく。

ロシア制裁の最終手段として、SWIFT(国際的銀行間決済システム)からロシアを排除するとの報道だ。

やっぱり、やるの?マジで、完全にやるの?(幸に「完全に」ではない)

私たちドイツ人はどうやって天然ガスをロシアから買えばいいの?だって支払いが出来ないじゃない。どうすればいいの?原発は止めちゃったし・・・アメリカが「ガスは保障するから安心しろ」と言っているって?でも、それはパイプラインじゃなくて、船で輸送するんでしょ?いまのアメリカの港湾は、パンデミックで人が集まらなくて、機能不全になっているんじゃないの?物流の停滞でインフレが酷いのはどこの国だっけ?

こんな声が聞こえるようだ。ウクライナを助けるためにはドイツ1国くらいは犠牲にしてもいいということか。

日本にも影響はある。

日本の三井物産はロシアビジネスで巨額のプロジェクトをスタートさせているみたいだけど、決済が出来ないなら、それも頓挫するわナア。日本に輸入されている天然ガスも来なくなるネエ。結構な量だ。電気はどうする?大丈夫?まあ、何とか頑張ってくれ・・・いつまでかって?う~ん、長くなるかもしれないナア。それから三井物産、これは倒産するかもしれないケド、それくらいは覚悟しておいてヨネ・・・いや、政府が助ければいいか。

こんな感じになるか・・・要するに、SWIFTを経由した売買ができないなら、何をマネーにして決済するかという話になる。それはアメリカ、EUなど旧・西側政府の裁量とは無関係の何かならマネーに使えるという理屈だ。マネーは評価尺度、取引仲介機能があれば最低限機能する。

そもそもマネーは自然発生的に経済プロセスから生まれるものであって、そのマネー形成プロセスを政府が自由にコントロールできるものではない。取引機会があれば、必ずマネーは自然発生する。

クラシックな形でよければ金取引のオフショア・ネットワークがあれば使える ― 残念ながらこれは寡聞にして聞かない。金がダメなら暗号通貨でもよい。DIGITAL通貨があればそれもよい。人民元で相手が — ドイツが、日本が、フランスが — 支払ってくれるなら、あるいは受け取ってくれるなら、それも良い。手元に人民元がなければ中国の銀行が運転資金を貸してくれるだろう。そうすれば中国、日本、ドイツ、フランス等々、すべて八方ウェルカムになる。経済のポイントは当事者全てがウェルカムということだ。ひょっとすると日本はロシアに円で払えるかもしれない ― さすがに英米の手前、やりづらく、SWIFTでなければ非効率にはなるが取引は出来る。暮らしを守る行為の集積が《経済》なのである。この自然な経済プロセスのどこが本質的に問題なのか、小生には分からない。

「価値」やら「主義」やらは地に足が着いた生活感覚の上になければならない。おしゃべりや見栄や高揚感では空腹もみたせない。人生とは関係のない代物だ。

最も怖いのは意図せずして、善意の行動を積み重ねる結果、世界大戦へと拡大することだ。だからルールを設ける必要がある。鉄則は戦争当事国の領域内に武力紛争を局地化することである。なぜそれを誰も発言しないのか、不審で仕方がない。事は世界平和に関するのだ。戦争状態が長引いて喜ぶのは軍需産業だけである。

それにしてもネエ、三井物産という会社だが、ずっと昔に「イラン革命」で大変な火傷をして、総合商社No.1から滑り落ちたことがある。今度はロシアが「戦争」を勝手に始めてしまった。商社ビジネスの「業」とはいえ波乱の多い会社である。

マ、SWIFTから完全排除するなら、日本政府も何が起こりそうか、十分に国民に説明しておいた方がイイと思われる。

ロシアも無理な出兵であったが、ロシア制裁を無理に行うと、ロシアの破綻のあと、NATOも空中分解して「旧・西側諸国」なる勢力まで消滅するかもしれない。

そして誰もいなくなった

これも可能性の一つだ。

その果てに、機能不全が続いている「国際連合」。これも拠出金が高いし、いざという時は小田原評定で役には立たないし、脱退国が続出するかもしれないネエ。小生が暮らしているマンションも町内会費を払っている。で、何がメリットかと言うと、よく分からない。多分、メリットらしいメリットはないのだと思う。国連はそれほど馬鹿らしくはないが油断はできない。油断は禁物だが、国連に見切りをつけられてしまうと、『そして誰もいなくなった』を超えて、応仁の乱のあとの京都さながら

汝(なれ)や知る 都は野辺の 夕雲雀(ひばり)

      上がるを見ても 落つる涙は

これが真の意味における《Post-WW2 Regime(=ポスト第2次世界大戦体制)》の終焉であろう。

所詮、第2次大戦後につくられたモノは、昔はなかったものだ。あっても役に立たなくなったなら、そもそもなくてもイイ。昔はなかった。なくてもイイものはなくした方がベターだ。かえってうまく行く。これにも一理あるだろう。


何ごとも無理を重ねるとき失敗は起きる。それも得意分野で失敗するものだ ― 苦手分野で無理はしないものだ。

無理は「出兵」する側にも、「制裁」する側にもありうる。剣呑、剣呑・・・


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