2022年2月26日土曜日

ホンノ一言: お寒いのはコロナ政策だけじゃない、ロシア外交もお寒いネエ

 安倍政権以来の対ロシア外交の蓄積は、とうとうゼロにリセットされた模様だ。

今朝のワイドショーには小野寺元防衛相が出演して、

プーチンを相手にした北方領土返還交渉はなんの成果もなかった。ゼロです。プーチンがいまの地位にある限り、話をしても駄目でしょう。今回のウクライナ侵略があったいま、むしろソ連による不法占領をG7各国に訴えて、その不法性を世界に知らしめていくのが重要です。

大体、こんな趣旨の見解を開陳していた。

まあ、お説はその通りだと共感するが、不法占拠を世界に訴えていくなどというのは、ずっと日本政府が採ってきた戦略ではなかったのかと小生は記憶している。まあ、「4島(マルゴト)返還」を目指す、1956年の日ソ共同宣言に沿って「(とりあえず)2島返還」を実現する、どの選択肢をとるかは、その時々で変化してきたが、一貫性がないと非難するのは理解に欠けるのだろう。むしろ柔軟だったと言うべきで、実際にソ連の不法性を訴えるアプローチは既に2010年に米国・オバマ政権が日本の立場を支持してくれたので、相応の成果は得ているわけだ。

【ワシントン=弟子丸幸子】クローリー米国務次官補は1日の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問について「北方領土に関して、米国は日本を支持している」と言明した。オバマ政権が北方四島を巡る問題で日本支持の立場を公式に確認したのは初めて。そのうえで、日本とロシアが平和条約締結に向けた交渉に努力するよう求めた。

クローリー氏は「(北方領土問題に関する)論争は十分に承知している」と指摘したうえで、4島返還を求める日本の主張への支持を表明。「だからこそ、米国は長年にわたり、日ロ間の平和条約交渉を促してきた」と述べた。

Source:日本経済新聞、2010年11月2日

この地点から更に交渉を詰めようとしたのが安倍‐プーチン外交であるというのは、時系列をたどるだけでも、簡単に推測はつく。

それを元防衛相ともあろう御仁が、もうこれ以上話をしても駄目ですから、世界に訴えていきましょうとは、要するにこの10年間の対ロシア外交の努力は一先ずリセットする、というメッセージだと思われる。

情けないネエ・・・。ウクライナの政治家の呑気さ加減よりはマシかもしれないが、日本の政治家も『ダイジョウブですか?Are You OK?』と聞きたくなるときが多いような気がする。

今回の「ウクライナ侵略」を断行したロシアに懲罰を加えるため、金融制裁、貿易制裁が色々と公表されている。

データを見てみると、対ロシア融資において日本は結構なシェアを占めている。


Source:日本経済新聞、2022年2月24日

シェアトップはフランスである。フランスはそもそも19世紀から20世紀にかけてロシア帝国によるシベリア鉄道建設資金を融資したくらいでロシアとの経済的絆は伝統的に強い。マクロン大統領が懸命に英米とロシアとの仲介に努力を傾けているのはフランス(とイタリア?)の国益のためである。フランスに対して、ドイツは実物取引、特に天然ガスを通して、ロシアと非常に深い関係があるというのは周知のことだ。もちろん米国も対ロシア融資の相当部分を占めているが、それよりは安全保障上のアメリカのポジションを優先させて外交戦略を決めているのは明らかだ。そして、日本の融資シェアはドイツやオランダよりは高く、直接投資や貿易取引ではそれ程ではないもののロシア関連では強い利害関係をもっていることが分かる。ロシア経済が破綻すれば、そのまま日本の金融機関の不良債権が増えることになるわけだ。

その日本が、アメリカ、イギリスと同じ姿勢で、同じような内容の発言を繰り返すだけではなく、同じ行動までとるとなると、マア、(どの程度まで英米から評価してもらえるかは眉唾であるが)少なくとも両国からはウェルカムに違いない。が、ロシアから眺めると

日本は最近年の対ロシア外交戦略を180度転換した

という風にしか見えないはずである。一体、合計して日本は得をするのか、損をするのか、分からない。2014年の「クリミア危機」の際は、安倍政権であったが、日露外交案件の情況を説明の上、ソフトな対応をロシアに行うことの国際的理解を得て、実際にそうしている。今回の「事変」では、日本にはそんな覚悟もないと思われ、今は英米に追随するのが反発を買わないやり方だ、という程度のことなのだろう、と。

もしもこんな印象が間違いであれば有難いくらいだ。

それにしても、マスメディアの報道姿勢も極めて劣悪である。

今回のようなことが勃発すれば、まずは戦況と今後の見通しを解説するのは当然として、

  • 日本とロシアの外交上、経済上の関係の経緯と現状
  • 日本とウクライナの外交上、経済上の関係の経緯と現状

この二点は政府も白書を通して公表しているので、担当者が資料を調査し、データを比較、整理して、国民に広く正しい認識を持ってもらう。この程度の努力はしてもイイのではないだろうか ― ま、マスコミもマンパワー不足だろうというのは分かる気もするが。正しい調査がそのまま経営成果に直結する商社、銀行、メーカーなら当然の事、やってますゼ、このくらいは。マスコミは言いっぱなしでお気楽なもンですネエ。こんなところである。

許されない暴挙です。この横暴に世界はどう対応するのでしょうか?

一先ずこう言っておくのは当然だが、こればっかり言ってそれで終わりっていうのもネエ・・・大体、「世界」っていう単一の国があるわけじゃない。対ロシア関係は国によって異なる。ロシア外交も国によって異なる余地がある。合唱に加わるのはいいとして、そのとき理性は何を考えているかが大事だろう。ニュース解説に使うパネルの細かなディーテイルに対比して、ほとんど中身のない説明、誰もクレームをつけない語り口を視聴していると、その知性のレベル、考察力のなさ、責任感の欠如がアリアリと感じられ、文字通り、《お寒い感覚》にとらわれる。もう日本国内の、特に大手民放TV各局は「報道」という目的を経営からは放棄したのじゃないか。「伝える」よりは「(CMを)みてもらう」。「背に腹はかえられぬ」という苦しい経営状態の現実が察せられ、怖い感覚に襲われる。

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