今日は、文字通りのホンノ一言。
異次元の子育て支援策が最大の政治課題になってきている。先日も、防衛費倍増とは異なり、子育てに関しては消費税率引き上げも理に適っていると投稿した。
とはいえ、消費税率引き上げに対する日本国民の感情的アレルギーは相当なものであり、ヨーロッパのようなVAT(付加価値税≒消費税)の税率20~25%など夢のまた夢であろう。
ただ、子育て支援、ベーシック・サービス、教育支援、人材育成支援の拡大等々、財源拡大は避けて通れない。増税は、日本人が乗り越えなければならない壁であるのは、もう誰も否定できないはずだ。
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増税がこれほどまでに拒絶されるのは、税によって奪われる購買力が、<財政再建>のため、つまり予算規模一定の下での国債管理、つまりザックリと言えば、国の借金返済に充てられる可能性が高いからだ。
国債は将来世代から借りた現在世代の負債である。借金を未来に先送りしないのは確かに良心的であるが、普通の家計に置き換えて考えてみたまえ。所得が増えないまま「家計健全化」を狙って借金の返済を始めれば生活はきつくなる。当たり前の理屈である。
日本人の収入が増えて行かない状況で、ひとえに財政再建のため増税を受け入れて、甘んじて生活をより貧しくするなど、普通の日本人が賛成するはずはない。
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それでも子育て支援は強化する必要がある。日本社会の維持のためには解決しなければならない問題がここにある。そのための財源がいる。
国債増発は財政の信頼を考えれば無理だ。臨時的にカネを探しても継続が困難だ。だからだろうか、TVのワイドショーを視ていると、素人の若いコメンテーターが
である以上、高齢者に向けた年金を改革(≒減額)するしか道はないわけですよネ。
などと発言している。Aが必要になったから、Bから抜いて来る、いわゆる<やりくり財政>の提案だ。「いかにしのぐか」を何時も考えている御仁なのだろう。
ヤレヤレ、失われた30年の間、ずっとこんな風にやって来た。しかしネエ……、《年金改革》がいかに困難を極める政策であるのか、発言しているご当人は理解しているのだろうか?
エンプティだと今更責めても意味はない。多くの人はこんな風にやりくりで対応するのである。
いまフランス全土で起きているデモや暴動は、マクロン大統領による《年金改革強行》へ抗議する意志が民主主義の表出という形をとって現れているものだ。そして、今のフランスはひょっとすると明日の日本でもあるのだ。戦費調達に苦慮しているロシアのプーチン大統領ですら、ロシア国内の年金水準をどうすれば減額せずにすむかで悩んでいる。おそらく年金は減額せず、マネーを増発してインフレで解決するだろう。
年金減額は、既に年金を受給している高齢層だけが反発するわけではない。年金受給を控えた60代、50代の現役世代にとっても、人生設計を覆してしまう程の衝撃となるのだ。
大体、
塾とかお稽古ごとにお金がかかるから、お爺ちゃんもお婆ちゃんも御免ね。生活費を減らして助けてくれない?
こんな発想では、政策効果を合計してゼロにしかならないのは、簡単な理屈である。心理的悪化から塾もお稽古ごとも結局は続けられず意図した目的は達成できまい。
《公的年金制度》は、一度始めてしまえば、それが「国民皆年金」であれば、それだけ強く政府の手足を縛り、その呪縛から政府が解放される可能性などないと考えなければならない。
福祉国家は社会主義と同じであって、継続がどれほど苦しくなっても、一度始めれば停止できない。停止するのは体制そのものが倒壊するときである。もしそんな時になれば、あらゆる階層の国民全体が破綻した社会の中で塗炭の苦しみに泣くのである。
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恒常的な財源は税しかない。しかし、消費税率引き上げは、これまた極めて難しい。
であれば、増える税は<財政再建>でただ吸い取られるのではなく、確実に家計部門に還流することが目に視えなければならない。
そのためには、子育て支援に充てられる税は一般財源ではなく特定財源、つまり「子育て財源」とする。消費税と一括徴収されるものの明確に区分けされた《子育て支援特別消費税》という新税を設け、《子育て支援特別会計》を通して支出する。
特別会計にすれば、日本人は10兆円の税を新たに取られるとしても、それは薄く広くあらゆる年齢層の日本人が負担する子育て費用であり、そのカネはすべて子育て世帯に還流することを疑わないはずだ ― 確実に子供のために支出されるためには貯蓄可能なキャッシュではなく、現物支給に近いクーポンなどを活用する方が望ましい。これはちょうど、ガソリン税、自動車重量税などの「道路特定財源」と同じ会計処理になる。
子育て支援が例えば教育、医療など「ベーシック・サービス」に目的が拡大されるとしても、従来の消費税とは区分けされた、特別消費税の税率を引き上げればよい。
このように社会的子育てを視える化できれば、増税に反対する日本人もいるだろうが、少なくとも感情的な反発は(ある程度?)抑えられるのではないか ― 特別会計の所管は「こども家庭庁」であっても職員は(おそらく)厚生労働省から出向になるだろうし、そうなれば財務省は何も得をしないので猛反対するだろうが。