2019年2月1日金曜日

一言メモ: 賃金データの欠損を何とする??

厚生労働省の「統計手抜き」によって毎月勤労統計、賃金構造基本調査など基幹的賃金データの信頼性は大きく毀損されてしまった。

そして、あろうことか、2004年から2011年までの期間については調査原票を廃棄済みであるため正確な数字を復元できないという結論になったということだ。

とすれば、その期間内に発生した労災保険給付、失業保険給付の金額は何を基礎にして清算すればいいのだろうか?

というより、2004年から2011年といえば小泉改革が功を奏して次第に日本経済が復調したあと、2008年にはリーマン危機にみまわれるという非常に重要な時期にあたる。その重要な期間において、労働市場ではどのような動向が見られたのか。こうした実証分析が正確な賃金データの欠損が理由になって出来ないという事態は、日本経済の構造変化を精緻な方法で分析できないということでもあるので、これは先進国としては致命的な失態と言える。

他にどのような言いようがあるだろうか。

原票がダメなら(当時の主たる記録媒体を考慮すれば)磁気テープなりCDディスクなりにデータは転送されていないのだろうか。もし何らかの形で数字そのものはあるのであれば、首の皮一枚で救われたと言うべきだ。

報道では政府全体の統計行政システムを根本から再構築するという見方が出てきているそうだ。が、アメリカ型の分立主義で続けるのか、ヨーロッパ型の中央管理型に改革するのか、改革をするとして現実に指導・実行できる人材が日本にいるのだろうか?

ゴーンさんのように外国から日本に来てくれる専門家など、マア、おりゃあしませんわな。探してもいないはずだ。言うのは簡単だが、大変ですぜ。想像を絶する。

・・・まさに浜の真砂の如く難問は尽きない。

純粋の技術的問題と割り切って問題解決を図るにしても最適解はすぐには出ない。まして門外漢の政治家、ジャーナリストが首を突っ込みながらの進展を考えると、今回の厚労省の大失敗の影響はインフラの毀損にまで及んでいる点で戦後最大級とみている。

本震はまだまだ。本震がおさまっても余震の継続と復興の道筋が見通せないだろう。公的統計の信頼性が国際的観点から回復するのはザっと10年も先の事だろう。小生はそう観ているところだ。

その昔、「狂乱物価」、「オイルショック」の中で大蔵大臣に就任した福田赳夫氏は<日本経済は全治3年>と診断した。今回の政府統計問題はそれよりも根が深く<全治10年>と見ておくべきだろう。

東日本大震災➡原発事故から8年が経過して、政府統計のメルトダウンが起こった。あと心配されるのは、国債メルトダウンと突然のインフレ加速、そして東南海大地震の発生である。それまでには継続案件は何としても解決しておかなければならない。

国家的リスク管理がいま問われているのだと感じる。


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