2019年2月3日日曜日

一言メモ: 問題はいま噴出しているのだが民主党政権では何があったのだろう

2000年代に入ってから政府統計の「メルトダウン」が進行してきたことは、それ自体としては大問題であるにしても、今の時点で問題確認ができたことは良いことだと観ている。

調べてみると1979年という早い段階で日本オペレーションズ・リサーチ学会の学会誌だと思うが、行政管理庁行政管理局統計企画課(当時)に在籍していた田代文俊氏が以下のような報告をしている。

統計調査の内容も複雑かつ高度化する傾向にある。このことは,他方において報告者である国民の負担が増大することとなり、統計調査の実施が困難になるなど統計調査をめぐる環境は厳しいものとなっている。
更に、現場の担当者による提案として
このためには、統計調査の審査および総合調整の充実強化、時代の要請に即した各種統計の整序、体系化、各省庁の保有する行政記録の統計化の検討、統計用地域基準の設定に関する調査研究の推進、磁気テープ・マイクロフィルム等新媒体を用いた統計調査結果の早期公表の検討、地方統計機構の充実強化、統計調査員確保対策事業の拡充、統計の啓蒙普及の推進等、行政管理庁の各種業務を通じて総合的に当面するこれらの困難な課題に取り組んでいく必要がある。
URL: http://www.orsj.or.jp/~archive/pdf/bul/Vol.24_02_060.pdf

このように実に多岐にわたる問題が、40年も昔から統計業務を総括する官庁の立場から、認識されていたことが分かる。そして、本質的には、2001年1月の中央官庁再編成以降、どれも解決への道筋をたどっていない。それどころか、現実には統計業務の現場の弱体化は深刻化する一方であったという事実に気がつかざるを得ないのだ。

これとは別に、実はこんな指摘もある。

日本統計学会会長(注:当時)の美添泰人・青山学院大学教授(統計学)は「英国のサッチャー政権時に統計予算が半減され、質が低下した結果、GDPや失業率といった重要な統計の信頼性が失われてしまった。日本も同じ轍を踏むつもりか」と怒りを隠せない。

 危機感を持った日本人口学会は、原口一博総務相に意見書を提出。「予算縮減は調査の回収率および調査結果の精度の低下に直結する」「社会科学研究の水準を大きく後退させ、国や自治体の行政施策全般に影響が出る」などと訴えた。
URL: https://blogs.yahoo.co.jp/zhang_r/23138232.html

こうした発言の前に以下の動きがあったようである。

 「国勢調査の成果が目に見えない。何のために実施するのか不明」「もう一度、国勢調査の意味を問い直すべきだ」

 11月17日の事業仕分けで、作業グループからはこんな発言が寄せられた上、広報のあり方見直しを求める意見も多かったなどとして、国勢調査は総務省要求の予算682億円のうち5~10%縮減を求められた。
URL: 上と同じ

いわゆる「事業仕分け」は民主党政権による独自の政策というよりは財務省による演出と観るべき側面が強く、また統計業務を取り巻く環境は民主党政権になって一挙に悪化したわけでもないだろう。

とはいえ、短期的効果の有無を過剰に強調し、増税なき財源にこだわるという民主党の基本方針の中で、政府統計業務の弱体化がその頃に一層加速したという面は否定できないと。そう憶測している。その憶測は民主党政権当時に結構多数の人が共有していた。個人のブログであって裏付けなどはないが、上の文章はそんな共有された印象の一つではないだろうか。

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