4月14日(ブルームバーグ):日本政府は東京周辺を含めさまざまな地域での大地震の発生時期を予測することをやめるべきだと、東京大学のロバート・ゲラー教授が指摘した。地震予測のモデルに欠陥があるためだという。 日本では1978年に大地震を発生の3日前に予測することを目的としたシステムが導入された。同教授によると、この翌年の1979年以降、死者10人以上を出した地震が低リスクに指定された地域で起こっている。 同教授は英国の科学誌ネーチャーの記事で、「地震予測は不可能だと、率直に公言するべき時だ」とし、「代わりに国民と政府に対し『予想外の事態に備えよ』と伝え、われわれに分かっていることと分からないことを伝達する最大限の努力をするべきだ」と論じた。 3月11日の東日本大震災による死者・行方不明者は約2万7500人に達し、原子力発電所の事故で発生した放射能漏れを含め、戦後最大の危機となっている。大震災が起こったのは日本の予測モデルで大地震の確率が最低0.1%と見積もられていた地域だった。ゲラー教授が示した政府のデータによると、東京の南東の地域では確率は最大100%となっている。 ゲラー教授によると、日本の地震モデルは地域にはそれぞれ「特徴的な地震」があり、これによって各地域の地震発生の確率を算出できるというものだ。しかし1979年以降に10人以上の死者を出した地震が高リスク地域以外で発生していることは「リスク分布地図とその作成に使われたモデルに欠陥があり、採用すべきではないことを示唆している」と同教授は論じている。-Editors: Paul Gordon, Aaron Sheldrick
経済予測はともかく、地震の予測には私は素人だ。が、おそらくは「XX日以内に、YY地点を震源地にして、ZZマグニチュード以上の地震が起こる確率はPP%以上である」、計算結果はこんな風な形で得られるのだと思う。ゲラー氏によれば、予測が大きく外れたケースが何ケースか発生しており、それは採用しているモデルが不完全であることの証拠である。だから使うべきではないという、これが考えの趣旨だと考えられる。
予測には予測誤差がつきものである。そもそもガリレオの落体の法則にしてからが、地上では空気抵抗や風向きなど様々の要因が働くので、物体の落下を説明できない。物理学などの精密科学では諸条件を制御してやれば、十分満足のいく程度に予測できる、だから精密科学と呼ばれている。
ご存知のように経済予測は<当たらない予測>として知られている。今後1年間の経済活動は引き続き拡大を続けていくだろうと予測しながら、実際は急転直下の景気悪化に陥るなどとしても、専門家はそれ自体について驚くことはないだろう。それでも経済予測はなくならない。決して、経済予測がとるに足らない、つまらないことだから、許されているわけではない。経済予測を信じて拡大投資を実行して、それが原因で経営が破綻する企業もゼロではないのだ。
もしも予測と現実の進展がまったく何の関係もなく、それこそ「当たるも八卦、当たらぬも八卦」という程度のものであれば、誰も本気に予測に耳を傾けることはない。それはサイコロを振って、奇数が出れば景気拡大、偶数が出れば景気後退と予測するのと何も変わらないからだ。しかし、いささかでも予測と実際の推移に相関があるとすれば、予測の計算結果を確かめておくことは有用な情報になる。もちろん予測には予測誤差がつきものだから、「予測では拡大に出ているが、下ぶれリスクには十分注意しなくてはならないな」と言う風に利用しないといけない。それは丁度、台風の進路予測をどう使うかという問題と同じである。
台風によっては迷走する台風もある。進路予測とは全く異なる進路をとり、「この土地には来ないだろう」と安心しきっていた町に上陸し、たまたま(悪いことは重なるから)大潮の時点と豪雨が重なり、その町に大変な災害を招いてしまう。そんな事態も可能性としてはある。だから、そんな予測は聞かなかった方がよかった。それも理解できることであり、当事者になれば小生もそのように言うであろう。
しかし、上のようなケースが現に何例か確認できるからと言って、「予測は何の情報にもなっていない」と断言するのは行き過ぎである。非常に大きな予測誤差が発生することは、確率的には想定が難しいほどの大災害が発生することと裏腹の関係にある。予測できなかったケースがあるので予測には意味がない、というのは防波堤を越える津波が現に発生している以上、防波堤を作って安心するのは意味がない、というのとそれ程大きな違いはないような気がするのである。
このような理由で、私はどうしても報道されたゲラー氏の意見には賛成できかねるのである。
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