経済産業省から平成20年の産業連関表延長表(固定価格表示)80分類が公表されているので、ちょっと確かめてみた。
まず生産額に占める電力投入係数だが、トップ10は
金属鉱物 0.21
無機化学基礎製品 0.12
石炭・原油・天然ガス 0.086
鋳鍛造品 0.080499165
パルプ・紙・板紙・加工紙 0.068
化学繊維 0.0576
水道・廃棄物処理 0.050
非鉄金属製錬・精製 0.048
銑鉄・粗鋼 0.046
再生資源回収・加工処理 0.041
のとおりだ。
確かに鉱物、化学、パルプ・紙、鉄鋼・非鉄辺りが並んでいる。いわゆる重厚長大型の産業である。これに対して
電子計算機・同付属装置 0.004741991
乗用車 0.004293639
広告 0.003818693
電子応用装置・電気計測器 0.003746671
医薬品 0.003652496
その他の自動車 0.003489738
建築及び補修 0.00307753
金融・保険 0.002811465
映像・文字情報制作 0.002669619
物品賃貸サービス 0.001540085
といった産業は省電力産業であり電力価格上昇が直ちにコスト高にはならない。ざっと見ると、自動車、コンピューター、IT製品などが並んでいて、新聞などでよく報道される内容と一致している。同じ化学系でも製薬業は素材分野と違って電力価格アップに対して頑健だ。
ところが電力の供給制約から生産活動に対してどの程度の影響を予測しておくべきかとなると、また少し違う。これは電力生産が各産業の生産に与える影響力を比較すればよい。いわゆる逆行列表
の中の電力の列を上から下に見ていこう。そうすると「その他の対事業所サービス」、「金融・保険」、「建築及び補修」、「石油製品」、「教育・研究」、「運輸」、「商業」、「情報サービス」、「物品賃貸サービス」あたりが電力の供給低下から最終的には大きなマイナスの波及効果を受ける産業であることがわかる。これらは産業活動全体を支えるインフラ産業のような性質をもっているので、電力の供給制約 ⇒ 直接的影響からエネルギー多消費産業が低下 ⇒ その波及効果 ⇒ 省エネルギー産業へマイナスの影響 ⇒ 波及効果、・・・という各ステップでその都度影響を受けてしまう。合計としては、直接の影響を被る産業よりも影響は大きいという点に目を払っておかないといけない。(4/21追加:但し上で見ているのは、電力需要が消費者の段階でまず抑えられ、それが電力部門の中間財投入減、それが各商品の生産を抑えて・・・という波及だ。実際には、各産業部門の電力投入をアドホックに節電するということも行われている。これがどんな結果をうむか?こちらは少々計算を要するので時間をおいた後、改めてアップしたい。)
要するに、エネルギーが割高になることで産業構造全体が変化を迫られるわけだが、その過程で何もイノベーションを起こせないならば、日本の経済活動全体が決定的な損壊を被る。これが結論である。
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