2010年11月刊行だから大震災で激変したエネルギー事情を考慮すれば、一部の展望が変更されるのかもしれないが、基本は変わらないだろう。ともかく一気に読める本だ。
記憶に残るポイントを整理しておきたい。
- 1974年以降の世界市場における交易条件変化が資本主義経済の大きな曲がり角を画している。その中で日本経済を見ないといけない。
- 「低成長社会のもと金融経済化していく先進国のなかで(日本は)ひとつの先行性をもっている(もっていた)」<括弧は小生>
- 16世紀のスペインの戦争と財政赤字を支えたイタリアはオランダの独立とスペインの債務不履行の中で没落していった。この事情はアメリカと日本に相似の関係だ。
- レーガン政権の戦略は時代に先行しすぎていた。ルービン財務長官がとった1995年以降の「強いドル政策」は資本の完全移動性に支えられて見事に成功した。その戦略の破綻がリーマン危機。
- 現在の利子率革命と資本の海外流出によって国家が資本に裏切られれつつある。
- 環境規制という規制が新しいビジネス、新しい価値創造を生み出すかもしれない。だとすると、規制緩和、市場原理が問題を解決する一つの時代が過ぎ去ったのかもしれない。国際的な金融取引にトービン税を課すことは新興国の一人当たりGDPが2万ドルの高さに接近する段階で検討されることがあるのではないか。
そして何よりも
ソ連崩壊、冷戦終了とシンクロさせながら日本のバブル景気、バブル崩壊をとらえる視点!これには降参しました。批判は多々あるだろうが、一つの視座には違いない。
全般を通して伝わってきたのは<マネーという猛獣>の感覚。騎虎の勢いという言葉があるが、資本主義経済は元来が制御不可能な虎に乗って生きるようなものかもしれない。
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