2011年4月25日月曜日

今年度の経済成長見通し(日銀): プラス1.6%からプラス0.8%前後に

今日の報道によると、日本銀行は2011年度の実質GDP成長率の見通しを標題のように半分程度に下方修正するとのことだ。

東日本大震災によるサプライチェーン崩壊で多くの生産活動が停止状態にあることは何度も報告されている。その落ち込みが秋以降の復興需要で回復されるという筋書きだ。

この数字をみてちょっと吃驚したのは、これほどの大災害であるにもかかわらず、今年度もプラス成長するのか、というか、出来るのかという点。

これは成長のゲタの話しでもあるのだが、年度当初までずっと100の生産であったのが、以後、101、102、103、104と拡大して、平均では102.5になれば2.5%成長になる。これが最初に90に落ちてしまって、夏場の節電で95、秋には元に戻って100、その後110と急回復しても、平均では98.5。やっぱりマイナス成長で、成長率半減などではすまない。

よほど秋から冬にかけて需要が莫大な額で出てくる。そのように前提しているのだなあと解釈されるのだが、それには財源調達にケリがついていると仮定していることにもなる。それが増税で賄われるとなると、100の所得を100の復興へという形の移し替えになるので、需要はあまり増えない。では国債増発だと?本当に低金利で売れるのか。どうしても心配になる。国債を国内金融機関にはめこむには、銀行などはどうしても米国債を売るのじゃあないか?しかし、低金利継続、輸出低下でトレンドが円安だとすれば、銀行はまだしも米国債の方を持っていたいはずだ。本当に復興債なんて売れるのか?

ま、今後、詳細な情報が出てくるだろうから期待したいところだ。

それにしても「失われた20年」と言われながらも、日本の実質GDPがこの10年も増えている事実は、決して当たり前のように天から授かったものではない。下図はまた世界経済のネタ帳に作ってもらった。

[世] 日本の実質GDPの推移(1980~2011年)

上のグラフをみると、2001年度から2010年度(実績見込みであろう)までの10年間で7%強拡大している。年平均では1%にもならないが、労働力人口は減る、マーケットは縮む、リーマンショックはある、それでこの数字だ。今年38歳になるイチロー選手のようにはダイナミックでないが、現役の日本人は本当によくやっているなあ、と小生は感じるのだが、どうだろうか。

戦前の日本人も下のグラフのように頑張っていた。とにかく人口が増えていましたから、ね。戦前はとにかく第一次世界大戦の特需のあと一気にバブルがはじけ、その最中に関東大震災があったものだから、日本は大変苦労した。しかし図にみるとおり1920年代の失われた10年を経て、1930年代には輝きを取り戻している。重工業化の時代で、この時の技術がそのまま戦後日本の復興に生きた。


(データ)大川一司・篠原三代平・梅村又次「長期経済統計1 国民所得」から粗国民所得

直近のグラフをみて改めて分かること。大震災の今年にプラス成長できたとしても、やはりリーマンショックの傷跡は明らかだ。世界規模の金融パニックは文字通りの大災害、グローバル・ディザスターとも呼べる大事件であった。天災を制御することは難しい。しかし経済活動は人間がやることだ。恐慌には清浄化作用などのメリットもあると言われたりするが、そのメリットなる作用は本当に巨額の損害を上回るほど大きなメリットなのか?

多くの人が不安定よりも安定を望むのであれば、社会を安定化することの意義をもう一度考えるべきかもしれない。

たとえそれが市場の自由な活動を少し制限して、計画経済的な要素を少し導入し、経済が少し不効率になって、毎年のGDP成長率が1%から0%に下がることになるとしても、だ。それでもなお、人口減少社会で一人ひとりの視点に立てば、高い生活水準を守る、否、より高い生活水準を実現して行くことだってできるわけだから。

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