2018年9月18日火曜日

北海道の電力をめぐる論点と主観的見通し

先日の北海道胆振東部地震については、地震自体の被害も確かに大きいが、それよりはむしろ北海道全域ブラックアウトという戦後日本では(ほとんど)初めての経験をどう理解すればいいかという点に問題は集約されつつある。

TVのワイドショーでは慎重に論題には挙げていないが、結局、泊原発の再稼働を認めるべきか否かという点にしぼられていくのは必至である。

この点は誰もが分かっているとみえて、特に「反原発派」を自認する向きは、はやくも絶対反対の論陣を張り、気の早いグループはもう路上デモを打っているようである。

その反対論が政策として現実妥当性を持つかどうかが今後の焦点になるだろう。いまのところ、今回のブラックアウトを泊原発再稼働の是非と関係づけて議論すること自体に反対しているのは、マスメディアの中の「しんぶん赤旗」(日本共産党)にほぼ限定されているようである。エコノミスト、電力エンジニアも意見が割れているようだ。

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今後検証されるのは、先ず次の二つの点だろう。
  1. 泊原発が稼働していれば、今回のブラックアウトはなかったか?
  2. 今回のブラックアウトは泊原発が稼働していなかったことが原因なのか?
上の二つの設問は同じではない。が、まずはこの二点に回答を与える必要はある。まあ、設問1には<なかった>という結論がより説得力をもつのではないか。稼働していれば、泊に外部電源は必要なく、今回の震度2で何の問題もなく稼働を続け(られたかどうかが検証のポイントではあるが)、胆振東部地震後の供給調整も円滑に行われていたであろうと推測されるからだ(推測できるかどうかを検討するわけだ)。設問2については、現在データを検証中であり、いずれ結論が出るだろう。

更に、足元の喫緊の問題は:
本年12月から来年2月下旬までの厳冬期を泊原発再稼働なしで人命リスクなしに乗りきることができるか?
これが実は議論を最も紛糾させる一点であろう。というのは、厳冬期にブラックアウトが起きれば、時期と天候にもよるが、次はほぼ確実に凍死者が少なからず発生するだろうからだ。リスクの評価に誰もが合意する唯一の科学的正解はないはずだ。が、前の設問1・2への回答によっては、上の問いに対する答えも一義的に決まってしまう。

厳冬期の北海道は札幌でも最低気温がマイナス10度まで下がるのが普通であり、上川・道北ではマイナス20度から30度まで下がることが珍しくない。首都圏や関西圏で机上の議論をしても、電力安定化が最も重要であるという現実がある。「何が正しいか」を語る理念や理論では結論は出ないだろう。現場の必要から結論は決まってくる。

まあ、しばらく時間が必要だろう。

政治家、学者、エンジニアから北電の経営戦略について様々な批判が提出されているが、そのほとんどは『いまそれを言っても意味がないでしょう』という内容のものだ。今年の冬がいまは問題の核心である。

長期的にみれば、どんなことでも可能になる。何でも言える。問題は足元にある。足元の制約の下で最適解を決定しなければならない。リスクを最小化しなければならない。この点がおわかりになっていない人は大変多いように見受けられる。

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小生が現場にいれば、こんな提案をする。但し、長期的戦略であるから今年の冬をどうするかとは無関係だ。この冬をどうするかについては、前の投稿でも書いたし、ほぼ最適解は自明である。

気象庁の『全国地震動予測地図』から明らかなように、今回地震があった胆振・石狩地方は北海道の中でも地震の多発地域である。その地区にわざわざ電源を集中立地させていたのは、電力の大規模需要地に近いためであり、送電ロスを避けるためであったと思われる。

もう一つの大規模発電施設である泊原発は胆振からは遠く、日本海に面しており、地震確率は非常に低いことがわかる。立地戦略として泊に原発を配置したこと自体は、合理的である。

ただ、小生なら、オホーツク沿岸にもう一か所、最新世代の原発施設を配置し、電源を分散化し、泊への集中度を引き下げたいと提案するところだ ― 悲しいかな、自由化による競争圧力にさらされている北電には、電力安定化にいくら寄与するとはいえ、こんなプロジェクトに資金を投じるインセンティブはないだろう。それと国防上の懸念があるという人もいるだろう ― まあ、道内に配置するよりは樺太・北海道連系線をひいて電力輸入するほうが北海道の道益には案外かなうようにも感じられる。

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