2020年8月4日火曜日

小手先の「損失補償」などで時間を浪費している状態ではないのでは?

訪日外国人観光客数は2018年に伸びが鈍化し、2019年には日韓対立激化に影響され前年比2.5%増と一層鈍化した。とはいうものの、それまでの数年間の動きには明らかに「観光バブル」の兆候があり、本年の東京五輪開催を見据えたとき、日本国内では宿泊施設、受け入れ能力の拡充が追い付かず、多くの観光地は「オーバー・ツーリズム」の状態に陥ると予想されていた。そんな需要超過への対応を急いでいたのが最近の観光関連産業である。

観光関連産業は「過剰投資」にあった。

いま新型コロナウイルスの感染拡大で「夜の店」、「飲食業」、「Go To トラベル・キャンペーン」等々、営業自粛や損失補償、経営支援などが為されているが、傷を手当てするような臨床的対応で乗り切れる環境変化ではないのではないか。

たとえ東京五輪が簡素化のうえ無事開催できるにしても、もしも中止ならば猶更のことだが、今年度から来年度にかけて観光関連産業の過剰投資が表面化することは間違いないだろう。

小手先の手当てについて激論を繰り返しているうちに、早ければ今秋、おそらくは今年末から今年度末にかけて「エッ、あの企業が!」という倒産劇が発生するのではないだろうか?

観光関連産業は、コロナ禍がなくとも東京五輪後には「宴のあと」、というか"Hangover Deterioration"で業績悪化が予想されていた。今回はカウンターパンチを食った状態で、一層苛烈な影響を蒙っている。そして、観光関連産業の悪化は不良債権として顕在化し金融セクターに伝播していく可能性が高い。

観光関連産業は、単に航空会社やJR、バス会社、ホテル・旅館等だけではなく、インバウンド消費に支えられてきたあらゆる業者・業界が含まれるのである。

小手先の「損失補償」などにエネルギーを浪費せず、根本的な産業政策を練っておくべきステージだろう。コロナ後の「グロース・センター」を国内に誘導するため着手を急ぐべきだろう。相当のカネが要るはずだ。総需要と総供給のバランスは「スリム化」と「新規成長支援」とを並行させなければ実現不能である。

現時点においてさえ、日本社会が取り組まなければならない社会インフラ上の課題は、既に顕在化している。これまたコロナ禍が教えてくれたわけで、いうなれば「不幸中の幸」である。

政策立案は(短くても)次の5年間をみて考えるべきだが、マスコミ報道は(せいぜい)これから1カ月を考えるだけだ。メディアに左右される世論に配慮するあまり、対応が近視眼的になれば、結果としての損失は巨額である。

今回のコロナ禍は、これまでの経験を踏まえれば、本年1月から数えて『ザっと1年、おそらく2年、長けりゃ3年、あるいはもっと』というのが、客観的かつフェアな見通しであろう。WHOも『特効薬はできないかもしれない』、『過剰な期待を抱くべきではない』と言い始めている。根拠のある発言であると小生には思われる。希望的観測には何の利益もなく、後日の失望から体力を奪われるだけだ。

「長けりゃ3年、あるいはもっと」を作業上の前提として、今後の政策を練り上げるべき状況だ。

新型コロナウイルスは高々インフルエンザなみの脅威であり、怖れることはなにもないと数字を示して力説してみても、現実がこうなっている以上は無意味である。『私が正しいのであって、間違っているのはあなた達だ』という社会科学者が往々にして陥る誤認識であり、これでは問題解決につながらない。崖から落ちようとするとき『これは何かの間違いだ』と叫んでも仕方がないのだ。問題解決は問題認識から始まる。

ずっと以前なら政治家が何も言わなくとも、というより政治家は何も指示などはしないので、各種「△△審議会」という舞台を回す官僚組織のほうで政策立案を進めていた。いまはどうなのだろう?『ご指示があるのを待っているところでございます』という惨状なら、また再び「政治主導」から「官僚主導」へとレジームがスイッチされるのは、時間の問題であるとみる。

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