2022年3月19日土曜日

ホンノ一言:ウクライナのゼ大統領に国会演説を認めることは日本の中立を損なうのか?

今月23日に決まったウクライナ・ゼレンスキー大統領のオンライン国会演説。どんな内容を語るのか心配している向きもあると伝えられている。が、そこは元俳優の雄弁家。北方領土も話題に入れながら日本人との連帯を訴えるに違いない。

こんな方向に対して、何年か前の都知事選に出馬した鳥越氏が、

ウクライナは一方の交戦国。ゼ大統領の国会演説には反対する。

こう明言している。

まあ、反対するのが、(本来は)本筋であると小生も共感する部分がある。


ただ、掘り下げて考えるべき余地もある。

というのは、これは今後の国連改革にも繋がっていかなければならないのだが、ロシアの軍事力行使に対して、国連を軸にした国際社会はこれからロシアという国家にいかなるペナルティを課していくのか?現時点の主たる問題はこれだろうというのがあるからだ。既に、《国際司法裁判所》はロシアに対して即時停戦を命令しており、ロシアはその決定に服さない意志を明確にしている。つまり、先日の国連臨時総会のロシア非難決議の賛否の票数からも分かるのだが、ロシアは国際社会においては「軍事力を不法に行使しつつある国家」として認定され、(こんな司法用語は確立されていないが)《犯罪国?》として裁かれる立場に立ちつつある国となった。

確かにウクライナも交戦国の一方の側ではあるのだが、ロシアが<加害国>、ウクライナは<被害国>という認識を国際社会がとってきている。ウクライナによる武力行使は通常の刑事事件における《正当防衛》に似た概念に含まれるのだろう。こんな方向が現在はあるようで、それが今後覆ることはちょっと予想できない情勢になってきている。

ということは、日本の国会でウクライナの大統領がロシアの不法行為を訴えるとしても、それは国際外交や日本の実質的な参戦云々の話しではなく、むしろ国際的な司法機能を支援するという目的に沿った行為だ、理屈はこうなるのではないかと考える次第。


前々稿にも書いたが、

世界には<中央政府>がない。国連を<幕府>とみるとすれば極めて弱体である。応仁の乱が勃発した日本と同じで、《裁定者》が不在なのである。多くの武装集団が分権的に自立していた封建社会の論理とちょうど似た論理で紛争現象が頻発するのが21世紀なのかもしれない。だとすれば、封建時代が小紛争は頻発しても大乱はなく長期間続いたカン所を勉強するのも悪くはない。

ともかく、現実がこうであれば、現実に応じた《平和維持のための統一ルール》が要る。互いに「正義」を主張して徒党を増やせば、その行為が「火に油を注ぐ」結果になる。危機拡大の紛争ループである。第一次世界大戦もこれであった。第二次大戦も危機拡大のメカニズムは同じだった。

日本の旧幕時代のような<喧嘩両成敗>を国際社会が「平和維持のルール」にするというのは想像困難だが、例えばロシアによる今回のような軍事力行使に対しては

  • 国連における一定期間の活動資格停止。投票権行使の停止。
  • 一定期間の経済制裁。もしくは国連に対する一定額の罰金支払い命令。

ま、上の例は例えばの話しだが、国際的な国家犯罪に対する刑事司法機能を強化することにより、国際司法裁判所(及び国連本体)が《裁定者》の役割を果たせる方向で努力できるかどうかがカギになると思っている。またまた例えばだが、先日の時事通信の記事によれば、侵攻開始2週間の時点でウクライナが蒙った経済損失は12兆円弱に達する。損害賠償と刑事罰(?)としての「罰金」を合計すれば、今回の不法行為に対して(和平の時期にもよるが)ロシアは50兆円程度の支払い義務を負わされても仕方がないのだろう、ザクっとした山勘計算ではあるが。

ま、要するにこうした《国際的司法機能》を強化していくことが世界平和につながっていくのは間違いのない所だと思う。

イギリスは早くもロシアを常任理事国から外す方向で動いているようだが、安全保障理事会の規定もおそらく手を入れられることになるのではないかと勝手に予想している。

 

0 件のコメント: