本日の日経「経済教室」で慶大の櫻川昌哉教授が中銀の独立性を議論している。その中で
金融政策決定のプロセスから、人々がもはや物価を決めるのは日銀ではなく、政府だと認識するようになれば、物価決定理論の枠組み変化が起き、放漫な財政を反映して物価は一気に上昇するかもしれない。デフレのうちはインフレの心配をする必要がないと考えるのは誤りで、デフレから急に悪性インフレに陥る危険性は理論的にはあり得る。明らかにインフレ警戒論である。インフレは常に警戒する必要があるのだという議論は、当然耳を傾ける議論なのだが、では確率がゼロではない可能性としてのインフレと、現に進行しているデフレと、いずれが日本のマクロ経済に対して大きなマイナスであると考えるべきなのか?この点を明らかにしておかないと、旱魃のときに豪雨を心配し、豪雨のときに旱魃を心配する、雇用が問題である時に問題解決後の次の問題を心配するという羽目になりかねない。社会科学は、将来を考えることも仕事だが、眼前の問題を解決することも職務の中の一つであろう。
(中略)
そもそもなぜ政府は、悪性インフレの危険を冒してまで積極的な景気刺激策に打って出る必要があるのかという疑問が生じる。逆説的だが、財政金融政策の有効性が落ちているからである。有効性が落ちているからこそ、政策の「規模」を追いかけようとする。ではなぜ有効性が落ちているかといえば、金融システムの劣化が進んでいるからだ。
とはいえ、足元の経済の行方すら方向感覚に迷うことは多い。日本の景気動向指数も判断の分岐点にさしかかっている。
内閣府が公表しているCIから先行指数(LE)、一致指数(CO)、遅行指数(LG)を図にした。昨年10月までの情報が使われている。図を見ると、遅行指数はまだ上がっている。一致指数は下がっている。先行指数は下がってきたが、直近の10月では少し反転している。これは景気の転換点特有のパターンであり、生産・販売はいまは悪いが近いうちに拡大に向かうことが示唆されている。ただ先行指数の反転は10月だけのイレギュラーな動きであるかもしれず、上の図からまだ断定はできない。
同様の読みにくさは、アメリカ経済についても言える。FREDで得たグラフだが、まず先行指数はこうなっている。
データは日本の先行指数の動きにも似て、今後の景気回復を示唆しており、だからこそアメリカ経済の明るさが世界で際立っているわけだ。
しかし、Hamilton-Chauvetのレジームスイッチングモデルに基づいた景気後退確率をみると、下のようになっている。同じFREDから入手した。
確かに、足元で景気後退局面にあるとは言えないが、その確率は昨年末にかけて高まっている。この兆しが時間の経過とともにより拡大してくるようなら、アメリカの景気回復は腰折れを予想せざるをえない。しかし、まだ何とも言えないのだ、な。
昨年春から秋にかけてはミニ景気後退であったのは事実と言えるが、それが<ミニ後退>ですむのか、<本格的後退>であるのか - もしそうなら底打ちは今年の夏から秋にかけてであり、今後も販売の実態は一層沈むだろう。もちろん「統計的に」というのは「これまでの経験則的に」という意味だから、世界各国の経済政策上の見通し、あるいは政局・政情の見通しについて信頼するべき情報をもっているのであれば、上の予想を修正する必要がある。
割れそうな氷の上を歩いているような感覚である。こんな時に保有株を買い戻すなどバカじゃないか。そんな心持になっているのも事実だ。
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