「夏の甲子園」で実に面白い記事がネットにあったのでコメントしたくなった。
全国高校野球選手権大会(甲子園球場)で初の決勝進出を決めた京都国際を巡り、NHKが韓国語校歌の歌詞「東海」を「東の海」として放送していることについて、韓国人教授がNHKに抗議したと韓国メディアが21日、報じた。韓国の誠信女子大学の徐敬徳(ソ・ギョンドク)教授が「固有名詞の『東海』を『東の海』と表記したのはNHKの明らかな誤りだ」とメールしたという。
京都国際は在日韓国人向け学校をルーツに持ち、校歌の歌詞は日本海について、韓国が国際的な呼称にするよう主張している「東海」が含まれている。NHKは同校の意向でテロップで歌詞を表示する際、日本語訳を「東の海」としている。
Date:8/22(木) 13:12配信
Original:産経新聞
URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/c4938bf40164e5ca184ff0ca8f4db818a8a3c672
もし自分がNHKの職員で、この抗議の電話を受けた担当者であったならどう対応するだろうと、シミュレーションしてみた。頭の体操だ。
一番簡単なのは
いま担当の者と変わりますから・・・
すぐにパスしてしまう。これが第一案。しかし、それなりの年配になっていれば、これはできない。自分で対応しなければならない。
次は、
少々、お待ちください。
という時間稼ぎ。これが第二案。誰か、いい答え方を思いつく人に相談するのだ。
小生はその相談を持ち掛けられた人になったつもりで考えた。それが次の応答だ ― 日本語のやり取りになっているのもシミュレーションゆえである:
小生: もしもし、あっ、お電話代わりました。韓国語の歌詞を日本語に訳したその中の語句でご連絡をいただいたのですネ。
それでですネ。画面下のテロップなンですが、元の歌詞が韓国語ですので、それを日本語に訳しているだけなんですヨ。
先方: だから元の歌詞の「東海」という言葉を「東の海」に訳しているのは間違いだと言っとるンです。
小生: 元の歌詞にある「東海」は固有名詞だということですよネ。
ただですネ、日本語訳のテロップで「東海」としてしまうと、日本では愛知県や静岡県辺りの「東海地方」という意味になってしまうんですネ。「東海道」という呼び名も普通に使われているくらいですから。ですから、日本語文章でただ「東海」と書くと、元の歌詞の意味が通らないンですね。和訳という作業を機械的にやると、韓国語の「東海」は日本語の「日本海」になるんですヨ。
先方: それは怪しからん言い分だ!
小生: そうなってしまうンですね。日本語ではそういう言葉になるんです。
ですから、言葉の意味をとって「東海」を「東の海」という日本語に訳したのは、こうしたトラブルを避けるためだったと思うんですヨ。京都国際高校のサイドと相談したかどうかまでは私には分かりませんけど・・・もし詳細が必要なら京都国際高校の方に聞かれた方が確かだと思うンですが・・・私どもとしては、あくまでも日本語にどう訳するかというだけなので・・・
これが第三案になるが、さてNHKはどう対応するのだろう。
これで思い出したのが、イギリスとフランスを隔てる「英仏海峡」、英名の”English Channel"だ:
以前投稿したように、海洋ではイギリスの先輩格であるスペインでは"El canal de la Mancha"と呼んでいる。フランスに行けば"la Manche"になる。
しかし、イギリスのBBCが"English Channel"と言ったからといって、スペイン人やフランス人がBBC本社に抗議をすることはない(と思う)。この点ではヨーロッパ諸国の方が永年の対立抗争から多くの事を学んだこともあって、成熟しているのだろう。
言葉が違えば、使用する単語、呼び方、発音が違うのは当たり前である。
そもそも「国際」とはこういうものなンだと弁えれば、原文のハングル歌詞のまま「東海」と訳しても(意味不明になる可能性が高いが)別に大問題ではないし、歌詞末尾の「韓国の云々」を「韓日の云々」に修正する必要もない。そのまま原文の通りにストレートに和訳しておけばイイ。せいぜい「東海」をこんな風に鍵括弧で囲むかどうか位が判断のしどころになる程度のことである。そして、こんな風に対応しても、別段「我が国の国益」が損なわれることにはならないと思う。無駄な議論に汗を流す必要はない。
この件で、ちょっと検索をかけると、くだんの歌詞の原文と和訳全文がかかってくるどころか、『ハングルの校歌など聞きたくない」などといった感情的な記事ばかりが検索されてかかって来る、そんなネガティブな反応ばかりでネット世界があふれるという、日本社会の醜悪な側面を露呈するよりは余程「国益」にはプラスである。そう思うのだ、な。
【加筆修正:2024-08-23】
0 件のコメント:
コメントを投稿