2019年6月4日火曜日

FANG株暴落とアメリカ独禁当局の姿勢について

ロイターがアメリカの巨大ICT企業”FANG"に対して独禁当局が調査を始めるというので、昨日のニューヨーク市場では関係企業の株価が5~7%程度の暴落を演じた。
こんな報道だった:

[ワシントン 3日 ロイター] - 米政府は大規模な市場支配力を有するアマゾン、アップル、フェイスブック、アルファベット傘下グーグルへの調査準備を進めている。関係者が3日、ロイターに明らかにした。
関係者2人によると、国内の独占禁止法順守を手掛ける米連邦取引委員会(FTC)と司法省が4社に対する監督を分担し、アマゾンとフェイスブックはFTCの、アップルとグーグルは司法省の監視下に置かれるという。
ハイテク大手を巡っては、その過大な支配力により、ユーザーや競争市場に悪影響を及ぼしているとの見方が台頭。米国内のみならず、世界中でハイテク大手に対する反感が高まっている。トランプ米大統領はグーグルやアマゾンを批判しているが、根拠は示されていない。 
報道を受け、フェイスブックとアルファベットの株価はこの日、6%超の下げ。アマゾンは4.5%安、アップルは1%安となっている。

(出所)ロイター、2019年6月4日

NewsPicksで以下のようなコメントをつけておいたので転載しておく。

***


独占のデメリットとは「市場支配力」、より端的には「価格支配力」の行使によって独占利潤が形成され、エンドユーザーを含めたその他市場参加者の利益が侵害されることにある。

ずっと<昔>は高すぎるシェアが必然的に独占価格の形成につながるとみて独禁政策の必要性が説明されたが、その後はシェアの高さでなく実際に市場支配力を行使しているか、また行使できる環境に置かれているかに着目するコンテスタブル・マーケットの見方が広まってきた。

FANGは確かに巨大化し、市場支配力の行使が懸念されるほどの企業に成長してきた。反面、自動車企業も最近は同じような状況だが、インターネット・ビジネス拡大期において、必要な研究開発や設備投資を進めグローバルな競争優位を形成するには、それだけの企業規模が必要であったという面もある。

もしもFANGの拡大戦略が実行されていなければ、成長するマーケットの中で世界のICTビジネスはどうなっていただろうか?アメリカ経済の成長エンジンはどうなっていただろうか?こんな視点にも意味があるのではないだろうか。

独占禁止当局に与えられた課題は、具体的にどんな点において「交渉上の優越した地位の濫用」が行われ、エンドユーザーも含めた市場参加者の利益を侵害してきたかを立証することにある。

まあ攻略のための攻め口は(ある程度)見当はつくが、決してやさしい問題ではないと思われる。

小生のあくまでも個人的な印象だが、FANGのいずれをとっても、(各社個別に見ると企業行動は一様ではないが)将来にかけてあってほしいビジネスを提案してきた企業であり、またグローバル市場において潜在的な新規参入企業の脅威やアグレッシブな既存企業との激しい価格競争にさらされている、そんな風にも感じられる。

それにしても、アメリカの独禁当局が米中貿易(経済)紛争の真っただ中というこのタイミングで、このような方針をとったこと自体の政治的意味合いの方が、面白いテーマであるのじゃないか、と。そんな気もしている。

***

つけたコメントは以上だ。

……トランプ政権は1年ほど前になるかAmazonのベゾス会長を非難して同社の株価暴落を引き起こしたことがある。今回はFANGである。ト大統領が来年の大統領選挙での再選への意志を明確にしたタイミングである。小生は限りなくインサイダー取引の臭いを感じる。今後、史上最悪の大統領として不動の一位を占めてきたWarren G. Hardingのポジションを奪う事態にならないよう祈るばかりだ。

この投稿、まさかホワイトハウスの圧力で削除なんてことにならないよネ…、念のため原稿を保存しておくことにしよう。

【後刻加筆】敢えてFANGの株価暴落を招く方針を固めたのは、トランプ政権がFRBに発する「利下げ要求メッセージ」、というか(それよりも)「早期の景気後退演出と来年初以降の景気回復」が目的ではないか。そんな可能性もある。インサイダー取引の臭いがするからと言って、そう決めつけることは必ずしもできないと気がついた。マア、いずれにせよ粗暴で向こう見ずな政権である。

0 件のコメント: