2011年6月9日木曜日

覚書き―ヨーロッパの電力輸出入

ドイツが脱原発を決定したという報道をきっかけに、ドイツは電力料金上昇はもちろん、今後は原発を活用しているフランスから、一層多くの電力を輸入せざるを得なくなった。そんな話が増えてきている。

かくいう小生もそうだろうと思っていた。ところが、ツイッターの場で、原発推進派のフランスと脱原発のドイツとの電力取引が話題になっている。特に、フランスはドイツへ電力を輸出しているのではなく、逆にドイツから輸入しているのが現実だ。その情報が流れてきたときは、正直、「えっ、そんな風になってるの?」と吃驚した。

やっぱり、情報ネットというのは、大変有り難いものだと思う。お顔は存じませぬが、そんな交流が多くの人と簡単に可能になったことこそが、ICT革命の果実であると実感するのだ。

さて、フランスはドイツから電力入超だという資料として、主に以下のサイトが参照されている。
これによると、確かにドイツはフランスに対して、輸出が11.4TWh、輸入が3.23TWhになっているので、フランスの大幅入超、ドイツの完全な輸出超過である。

実は、小生の手元にある「エネルギー白書2010」(経済産業省編)の222ページにも「欧州の電力輸出入の状況(2007年)」という図が掲載されている。それを下に示そう。
少し画像が暗くなっているが、右上の赤紫部分がドイツ、左側の暗緑色部分がフランスである。この図によると、数字の単位は100万KWhだから、図の数字を1000で割れば、TWhになる。

図をみると、ドイツからフランスに対して725百万KWhの輸出、フランスからドイツに対して16443百万KWhの輸出と記されていて、これだと完全にドイツの入超、フランスの出超になる。しかも、上記ドイツRWE社の資料も、上の図も2007年実績だから、話が奇妙だ。

上の図の掲載元は経済産業省のエネルギー白書だが、基礎データは図の下にあるようにIEAの"Electricity Information 2009"である。それに対して、ドイツRWE社の資料はGermanyとあるが、RWE社の自社調査データか、ドイツ政府の公表データなのかが判然としない。また、このデータはMarket Dataであるという表現の意味が、今ひとつ資料では把握しきれない。

どちらにしても、二つの数字は余りに違う。
欧州の電力取引は複数ルートで、かつスパゲティ状態だから、集計の仕方、集計範囲の決め方等々で数字が違うことは容易に想像できる。とはいえ、事実認識に関わるので、気持ちの悪いことである。すぐに違いの理由がわからなかったので、覚書としてアップしておく次第だ。

今後、詰めていきたいと考えている。原発事故以来、エネルギー産業に関心をもって、色々と調べ始めてはいるものの、まだまだ駆け出しです。

ツイッターの議論では、フランスは原子力発電が主になっているので出力調整が難しい。一度止めると再稼働まで時間がかかる。それで需給調整が不安定になり、ドイツから電力を融通してもらうことが多くなると指摘されているが、IEAのデータを見る限り、ドイツもフランスも電力輸出国であることは間違いないようだ。どうも在庫ができない電力は勝手が違ってややこしい。

ただ、エネルギー自給率という点から比較する限り、ドイツとフランスは逆の方向に歩んでいるのではないかとは思う。たとえば下の図。

(出所)経済産業省「エネルギー白書2010」67ページ

これまたエネルギー白書からの転載だが、この40年間でドイツのエネルギー自給率は下がり、フランスの自給率は上がった。純(6/9修正:準)国産で核燃料サイクルを完備したフランスのエネルギー政策の理念は、この点では、一応、功を奏している。そう評価しても良いのではなかろうか?もちろん新エネルギーに舵を切ろうとしているドイツからも、その戦略性には生存への意志というか、強い迫力を感じる。そう思うのは私だけではないと思う。

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